カタパルトスープレックス

よみがえるブルース/トゥー・レイト・ブルースのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.8
ジョン・カサヴェテス監督二作目であり、メジャーデビュー作。ジャズ・ミュージシャンの話。

前作『アメリカの影』(1959年)はワークショップの延長線上の作品ですので、映画を作品として意識して作ったのはこれが初めてではないでしょうか。ジョン・カサヴェテス監督本人はスタジオとの関係で色々とストレスが残る作品だったようですが、それでもカサヴェテスらしさがすでに現れているのが面白いです。

ジョン・カサヴェテス監督の特徴は「不安定な感情」です。その不安定さを生み出すために感情がぶつかるシークエンスはしつこいくらいに長い。本作ではその特徴を生み出すシネマ・ヴェリテはまだ使われていませんが、感情がぶつかるカタルシスまでのシーンがとてもカサヴェテス的です。

カサヴェテス監督作品において不安定な感情は男女間で特に現れますが、本作でも主人公のゴースト(ボビー・ダーリン)とヒロインのジェス(ステラ・スティーヴンス)が「不安定な感情」を体現しています。二人とも音楽家で理想と現実の間で苦しむ。その姿は監督ののちの姿とも重なりますね。

もう一つのカサヴェテス監督の特徴は「極端なクロースアップ」です。この「極端なクロースアップ」が大々的に使われるのが『フェイシズ』(1968年)からですが、本作でもところどころで使われています。ああ、カサヴェテスっぽいなと感じる瞬間。