明石です

キャッスル・フリークの明石ですのレビュー・感想・評価

キャッスル・フリーク(1995年製作の映画)
3.9
実の母親に古城の地下室で40年以上監禁され、40年以上虐待を受けて、精神も肉体もボロボロになりモンスターと化した男が、城にやってきた美女を襲う話。

『ゾンバイオ』や『フロム・ビヨンド』のスチュアート・ゴードン監督が、デビュー以来組んできた脚本家デニス・パオリと作曲家チャールズ・バンドと再結集して手掛けた、古巣帰還!な雰囲気の粋な怪物ホラー。

母親が息子をムチで打ち続ける毒々しいオープニングと共に幕開け、中盤のお約束のお色気シーンを経て怪物が解き放たれた後は、ヒロインの2人がただひたすらに叫び声を上げて城の中を逃げ回るというパワフルな映画。しかし全てを見せず不安感を掻き立てる独特の暗がりや、哀感を残すクールなラストショットなど、タダモノではない演出力が光る。そういえばこの人の映画で昼のシーンが映るのって序盤だけで、何かが起こる時は常に夜ですね。暗闇に存在感を出す人だから、ホラー的な快感を求める私としては喜んで見た。

それにしても、40年の拘束から解かれた怪物が1番最初にやることが、若い盲目の美女を夜這いして、彼女の服を匂ってエクスタシーを感じるというゴードン印のエクストリームな変態っぷりは本作で発揮されていて笑、そして作中メインの見せ場になるのが、美女たちを追い回す全裸(股間にはモザイクあり)の怪物の雄々しい姿ときた。やっぱりこの人の映画はパワフルなテンポで最後まで押し切る力技な感じがとても好き。

俳優陣にもゴードン印の常連さんが顔を揃え、『ゾンバイオ』で天才医学生ウェスト君を演じたジェフリー・コムズはアル中のダメ夫を、他作では脱ぎまくってきたバーバラ・クランプトンが貞淑で神経質な妻役と、一風変わった配役も楽しい。酔っ払った末に、妻と娘がいる城の地下室に娼婦を呼んでコソコソ楽しんじゃうコムズの圧倒的ダメ男っぷりは最高で、とはいえ、解き放たれたモンスターが妻子を襲い始めて以降の、彼のヒステリック(だけども力強い)演技は、B級っぽい設定の本作にタイトな印象を与えてる気がする。

あとバーバラ・クランプトンの疲れた演技もハマってますね。倦怠期を迎え離婚寸前の夫コムズといさかいを起こす場面では、単なるカラダの綺麗なスクリームクイーンに留まらない役者魂を発揮していて、この人も大人になった(なってしまった)のだなあと妙な感慨を得てしまった。しかし心のどこかで彼女のエッチなシーンを期待してしまうのはなぜなのでしょう、、

シナリオは(モンスター映画にしては)意外にも練られていて、主人公が茶々を入れてしまった娼婦が、古城の捜査にあたる警察官と恋仲だったり、モンスターが実は主人公の腹違いの兄弟だったりと、かなり複雑な人間模様。こうして書くとなんだか馬鹿げてる感じが出ちゃうけど、これがけっこう良くできたストーリーで、パニック演出以外にもしっかりと見せ場アリ。異形の者と血が繋がってた!的な急展開の悲劇は『ダゴン』でもそうでしたが、この人たちの映画だと全然不自然に感じないのだから、シナリオの妙だなと思う。
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