YasujiOshiba

オーメン黙示録のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

オーメン黙示録(1996年製作の映画)
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イタリア版。字幕なし。23-6。未公開だけどVHSがあるだけすごい。プーピ・アヴァーティの絵はわるくないし、語りもしっかりしている。

原題は「L'arcano incantatore」(謎の魔術師)。教会から追放されたオカルト研究者の貴族の別名。その貴族の住む館の図書館がすごい。壁一面の本、螺旋階段、昇降する円形の燭台、迷宮のような作りに隠し部屋。いや、これだけの設定でぞくぞくさせられる。

そんな場所に、若い神学生ジャコモがやってくる。若い娘を妊娠させた罪から逃れるために、不思議な女性とオカルトめいた契約を結んで派遣されたのだ。契約の担保として、不思議な女が要求したのが母親の形見の品。それは信仰の証のためにつけていた血のついたシリス帯。不思議な女は、それがジャコモの服の裏地に縫い付けてあることを知っており、契約の担保としてあずかるから、剥ぎ取るように命ずるのだ。

それにしても、なぜこの不思議な女はそんなことを知っていたのか。訝しがるジャコモだが、教会の訴追から逃げるためには仕方がない。母の信仰の証であり、息子を霊的に守ろうとしていたはずのその帯をはぎとると、女にわたすのだ。女はいう。仕事が終わったら返してやるから心配はいらないと...

こうしてジャコモは、人里離れた城に趣き、その城主に使える。それまで司書の仕事をしていたネリオが亡くなり、彼はその後継者だという。城には城主とジャコモのふたりだけのはずなのだが、ところがなぜか女の声が聞こえる。やがて城主は、ジャコモに暗号の手紙を記す手伝いをさせる。ある本を下に、ページと行番号をうまく組み合わせて、数字だらけの暗号手紙を書く。相手も同じ本で解読するのだという。村にはゆけば、その手紙は死者の手紙だという。城主はそうではない。遠方の者と交流ができる力があるのだという。その村では、死んだはずのネリオが帰ってきたという噂が流れている。一体何が起こっているのか...

ラストは一種のどんでがえし。謎解きミステリーだけど、最後の最後は、冒頭の謎の女のもとへ行くジャコモが、あっとおどろく事実を知ることになる。予想がつくといえばつくのだけれど、生きた人間のあとで、そうではないあの男がニヤリと笑うのだ。

それにしても風景がよい。女たちがリアルでよい。娼婦の Eliana Miglio も印象的。そして、彼女が秘密を明かすヒントを与えるわけよね。黄色い花ね。それにしても、これはホラー映画じゃないな。いやホラーではあるし、特撮もあるし、一度はぼくも跳ね上がったんだけど、でもやっぱりどこか違う。

たしかに霊を扱うのだけど、2回ほどあった特撮は別にして、そのほかの場面でも、その存在しないものが実にリアルに画面に映っているんだよね。これはいわば霊のリアリズム、そう呼びたくなる作品でしたね。
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