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墓地裏の家のhorahukiのレビュー・感想・評価

墓地裏の家(1981年製作の映画)
4.2
『シャイニング』+『回転』+『吸血鬼』

古き良きゴシックなお化け屋敷ホラーを、フルチの独特なセンス(ゴアゴア&ウジムシ)で魔改造した異形な逸品。ホラー秘宝まつりで4Kレストア版が公開されるので通常版見たのだけど、こちらで公開されるが4Kレストア版(2K上映)とかいうズッコケ感よ…😭

しかも長らくDVDがプレミア価格になってて、やっとこさ発売されるのが通常Blu-rayのみって…。期待して損した感が凄い。向こうでは一年前に4KULTRA HD発売してるから、完全に日本でも4Kのが併売されると思ってた…もう海外版買おうかな…。日本語字幕なくてもセリフ超簡単だし。

本作は完全に『シャイニング』を下敷きにしており、パパママ幼い少年の三人が、パパの「仕事」をするために都会から田舎(森の中の一軒家)に一時的に引っ越してくる。ダニーのようなシャイニング能力に近いスーパーパワーを持つキッズは「絶対にその家に行くな!」と訴えてくる少女を幻視する…。

「やっぱり行かない方が…」というママの言葉にもパパが「超儲かるから!」とか言って強引にやってきたその家は案の定お化け屋敷だった…。このパパの仕事は、この家で愛人を殺害して自殺した元同僚の調査。実は大昔にフロイドシュタイン博士という禁忌の研究をして医学会を追放された人物が住んでいた…という設定。

フロイト的な精神分析をフランケンシュタインと絡める意図しか感じない博士の名前の通り、ジャーロ的展開を見せるのは流石のフルチ。本作は支離滅裂と批判されているのを良く見かけるけれど、全くそんなことはなく、しっかりと筋が通った「この家族の関係性についての分析」を寓話としてやってのけている。

深層としての地下は固く扉に閉ざされつつも、その地下から家族を襲い崩壊させる時を待ちかねているかのように、何かの音が絶えず漏れ出してくる。地下には何があるのか。この深層の扉を開く時、家族が水面下に抱えた負が溢れ出してくる。

「娘と以前に訪れてたよね?」というその土地の住人の言葉を否定し、「この土地は初めて?」の質問に口籠もり、更には若いシッターとは目線を相互に交わし合うのに対し、妻とは一方向(妻→夫)しか向かない視線動作の接写からも、夫はアンと以前から不倫関係にあったことがわかる。アンが露骨に妻を敵視している描写にもかなりの時間を割き、地下から漏れ出る血(夫の性衝動)をアンがキッチリと拭き取り妻に隠す等々、婉曲的に関係性の崩壊危機を何度も繰り返し描いている。

そしてそれは愛人を殺害し自殺したとされる以前の住人ともリンクする。フロイドシュタイン博士の妻が口にする「フロイドシュタインの流儀」とはまさにこのことでしょう。同様の家族がここの住人となり繰り返される。殺害演出がジャーロそのものなのも、男→女への暴走する性衝動を「負」の根底だと主張したいがため。そしてその「負」の被害を被るのは子ども。子どもが性器のような割れ目から脱出する「再誕」の両義性はフルチの人の悪さが出ていて凄く好き。

棒をぶっ刺してグリグリ回すというリアルドリチンなジャーロ(レイプ)描写とか、執拗な首の切断、腹から湧き出るウジムシとかに始まり、『ザ・サイキック』『マッキラー』で見せてくれた崖落下顔面削りを階段で簡易的に反復するセルフオマージュとか、のちの『マンハッタンベイビー』を思わせる「何かを持ち帰る子ども」だったりとフルチらしさ全開ですんごく面白かった!
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