ナカザワ

日本の悲劇のナカザワのレビュー・感想・評価

日本の悲劇(1953年製作の映画)
4.5
登場するすべての人間たちに血が通っていて、それぞれに歴史があって生活がある。当たり前のことだけど、それをここまでつぶさに映画で描いたことに感嘆。この作品に関しては、モブ、という存在がない。

自身の中に気づきや反省を見出しながら成長したり失敗したりする人々がいる一方で、執念と、恨みと、孤独の中でしか生きられなかったこの親子3人だけは、全く時が停止している。こんな悲劇がきっと戦後あふれかえっていたんだろう。そしてそれは今も変わらず、かたちを変えて転がっている。

生きることに精一杯だった戦後の動乱の中で、いろんな考え方の人がいて、政治に対する意見も様々で、生き抜くためにどう行動するのか個人個人が問われている描写が多く、(状況は全く違えど)コロナ禍の今の世の中とぼんやり重なってしまった。