えそじま

日本の悲劇のえそじまのレビュー・感想・評価

日本の悲劇(1953年製作の映画)
4.2
戦後の日本社会がこの女を殺しました。


闇屋や熱海旅館の女給としてその身を売ってまで子を育ててきた戦争未亡人とそんな親を軽蔑し棄て去ろうとする残酷な子達の断絶を描いた日本母捨物語。
無償の愛など存在しない現実の貧困家庭で、見返りを求める哀れな母親に子供達は一切の救いの手を差し伸べない。両者のエゴイズムがすれ違う様を生々しく描き社会全体の悲劇を一家庭の崩壊へとリアルタイムで象徴した衝撃作。

「どこか牧歌的で美しい人間愛」といった木下恵介の穏やかな印象とは一線を画した暗黒面が現代にも通ずる親と子の在り方を提議。「カルメン純情す(1952年)」などまだ可愛気のある方だった。


ただひたすらに闇。無音のモンタージュがその闇を一層深くする。
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