しゃび

日本の悲劇のしゃびのレビュー・感想・評価

日本の悲劇(1953年製作の映画)
4.5
【天才は相反するものをスマートに融合させる】


自己主張を聞くために映画を観てるんじゃない。自分の意見は自分で決めたい。

社会派と呼ばれる映画をみると、よく感じる。


奇妙な映画だ。
痛烈に社会の闇を映しているのに、説教くささが全くない。

本来強いベクトルを示すと、他の要素が薄まってしまう。墨で黒く塗りつぶしたキャンパスに何を書いたって黒なように。

天才は黒のキャンパスをカラフルに彩れるらしい。


カメラは人の上にあらず。
カメラが人から尊厳を奪ってはならないから。

カメラは人に近寄りすぎてはいけない。
人のキュートさは全体から滲み出るものだから。

ロッセリーニ的なのに、主体的で身勝手で滑稽でドラマチック。木下監督にしかできない荒技である。



【ネタバレ】
最後のシーンに度肝を抜かれた。
あの疾走は、抗いようのない世に投げつけたロックなのだと思った。
しゃび

しゃび