【天才は相反するものをスマートに融合させる】
自己主張を聞くために映画を観てるんじゃない。自分の意見は自分で決めたい。
社会派と呼ばれる映画をみると、よく感じる。
奇妙な映画だ。
痛烈に社会の闇を映しているのに、説教くささが全くない。
本来強いベクトルを示すと、他の要素が薄まってしまう。墨で黒く塗りつぶしたキャンパスに何を書いたって黒なように。
天才は黒のキャンパスをカラフルに彩れるらしい。
カメラは人の上にあらず。
カメラが人から尊厳を奪ってはならないから。
カメラは人に近寄りすぎてはいけない。
人のキュートさは全体から滲み出るものだから。
ロッセリーニ的なのに、主体的で身勝手で滑稽でドラマチック。木下監督にしかできない荒技である。
【ネタバレ】
最後のシーンに度肝を抜かれた。
あの疾走は、抗いようのない世に投げつけたロックなのだと思った。