ながの

日本の悲劇のながののレビュー・感想・評価

日本の悲劇(1953年製作の映画)
4.5
「日本の悲劇」という大きすぎるタイトル。終戦から八年、国内のニュース映像や新聞記事を劇中に織り交ぜていることで、よりリアルな時代感をこれでもかと叩きつけられたような気持ち。この映画、当時はどう受け止められていたんだろう。
ただただ空しさが残る。映画や演劇で、こうも救いようのない現実をまざまざと突き付けられる体験が好きみたい。

『二十四の瞳』といい、『カルメン故郷に帰る』といい、木下恵介監督は歌の使い方が本当に上手すぎるし、勉強になる。
佐田啓二演じる演歌師が「湯の町エレジー」を歌うシーンが場面場面で何度も挿入されるのだけど、これが超効いてくる。退廃的なオーラをまとったこの曲が冒頭から流れることで、観る側も覚悟が決まる感じがする。この映画の演歌師の描写は、いわゆる「演歌」という音楽ジャンルが、戦後どう成立していったかを知る上で、ものすごく分かりやすい資料でもある。

夫の墓前で息子から酷い仕打ちを受けるシーンでの選挙カーの声の使い方はドスが効いてたし、やっぱりこの映画で一番グッとくるシーンは、星空の下で演歌師と春子が語り合う場面。泣ける。
望月優子は「君の名は」シリーズの叔母さん役でしっかり認知して興味を持ち、今回観るに至りましたが、本当に素晴らしい役者さんです。言葉の一つ一つに重みと強さと芯と説得力がある。
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