冷蔵庫とプリンター

恐怖の一年の冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

恐怖の一年(1947年製作の映画)
5.0
傑作フィルムノワール。以下若干のネタバレを含む。

原題は"Repeat Performance"(再演)
大晦日に夫を殺害してしまった人気舞台女優シーラ(ジョーン・レスリー)は、この悲劇の原因はすべて一年のうちに生じたと考え、この一年をやり直したいと願う。この願いは新年の"奇跡"によって叶えられ、シーラは一年前の新年からやり直すことになり、悲劇から夫を救おうと決意するが、、

従来のノワールが悲劇を「回想」するのに対し、この野心的なB級作品は、悲劇を「再演」することで差別化を図る。このアイデアが今流行りのいわゆる「タイムループもの」に近似しているのはさておき、今作の魅力は、男の暴力性を究極的に描き出したところにある。大晦日に殺される夫だが、彼は戯曲家で、かつて駆け出しだったシーラを見出して成功に導き結婚したが、その後の創作活動で行き詰まり、酒に溺れ、浮気をし、妻シーラへの憎悪を膨らませていく(そして死ぬ)ことになる。

これは自尊心を傷つけられた男が怪物へと変貌する映画であり、妻であるシーラがダメ夫を救済しようとする自身の感情(果たしてそれは愛なのか)と折り合いを付ける話である。

B級ながらノワールの名に相応しいバキバキにキマった撮影(特に終盤)もさることながら、ジョーン・レスリーの抜群の存在感が映画を格段に上等なものにしている。精神病院の異様にデカい扉とかも良い。今こそ見直されるべき傑作。