のんchan

北国の帝王ののんchanのレビュー・感想・評価

北国の帝王(1973年製作の映画)
4.0
ロバート・アルドリッチ監督作品4本目の鑑賞。
今まで女性主役の風変わりな作品ばかり観てきたので、ようやくアルドリッチらしさここにあり!って感じの『男のための男の映画』でした。
そういう言い方は偏見になると解ってるけど、舞台は1933年なので仕方ないですね。


世界恐慌の煽りを受け大不況下のアメリカ。仕事にありつけない人々が溢れ返っていた。
仕事を求めて各地を彷徨うしかない浮浪者は"ホーボー"と呼ばれ、移動手段は貨物列車に忍び込みタダ乗りするしかなかった。
しかし、それをさせるわけにいかない鉄道員たち。

ホーボーたちの間で噂に上がる鬼車掌のシャック(アーネスト・ボーグナイン)が牛耳る"19号列車"は有名だった。
もし見つかろうものなら容赦なくハンマーで殴られ惨殺されるのだ。しかし、表向きは転落事故として処理されてしまう。それはそれは冷酷無比で正に鬼瓦のような顔をした怪物のような男だった。

そこに現れた北国の帝王と呼ばれる伝説のホーボー、A・ナンバーワン(リー・マーヴィン)。経験豊富、頭がキレて知恵が働く、中年なのに身体は不死身のように逞しい。ホーボーたちの期待は一気にA・ナンバーワンへ注がれる。
そこへ、帝王の座を奪おうと若いだけの痩せ男シガレット(キース・キャラダイン)が同乗してくる。相手にされないでいたものの、シガレットはA・ナンバーワンの行動を見て学んで行き、まるで自分がホーボーNo.1と仲間うちに言いたげ。いつ鼻先をへし折られるのか...


貨物列車の屋根の上での決闘が凄まじい。黒煙と白煙で画面が煙に全て覆われるシーンもある。
そんな動いている列車の上での対決は生々しく血だらけに。

タダ乗りは悪いが、殺人が罷り通るわけはない。もう正義の戦いじゃない。悪と悪のぶつかり合い、生きるか死ぬかの瀬戸際の緊迫感。
ラストはそう来るか?と驚きの連続。

男たちの善悪を超えた醜悪な格闘劇。それが当時の男のプライドであり強さの象徴だったのだ。
アメリカン・ニューシネマを経由して、現在ハリウッドの善悪を超越した作品として一目置かれているようだ。

作品としては素晴らしいとは思うけど...好みとしてはちょっと...
汗臭そうな親父たちしか出て来ないし、頭の中が単純そうなアメリカの労働者たちを描く、正に男の映画でした。
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