三樹夫

北国の帝王の三樹夫のレビュー・感想・評価

北国の帝王(1973年製作の映画)
3.9
絶対無賃乗車するマンVS絶対無賃乗車させないマンの自由をかけた戦い。ファシストは一泡吹かせるに限るぜという痛快な作品となっており、ゴミクズ野郎は川に叩き落すに限る。お前には心がないんだよ。監督のアルドリッチのフィルモグラフィーを見れば分かるが、この映画も反権力映画として作られており、劇中の無賃乗車は自由を求める反権力の象徴として描かれている。
1933年、大不況により職を持たないホーボーは無賃乗車によって各地を移動していた。しかし19号車を仕切る鬼車掌のシャックは無賃乗車を見つけると片っ端から惨殺していた。そこにAナンバーワンという無賃乗車のプロである北国の帝王が無賃乗車予告をシャックに叩きつけ、自由をかけた無賃乗車バトルの火ぶたが切って落とされる。

冒頭、無賃乗車したホーボーがシャックにどつかれ列車の下に落ち身体を真っ二つに轢死しており、無賃乗車で人殺しまでするのはどうなのと、観る者は無賃乗車する側のホーボー目線でこの映画を観る。シャックはファシストで、勝手に無賃乗車を異様に厳しく取り締まっている。取り締まっているだけではなく、明らかにコストに見合わないというかシャックの苛烈な無賃乗車取り締まりで大損まで引き起こしかねん状態になっている。演じるアーネスト・ボーグナインが目玉をひん剥いて抜群のファシストジジイ演技をしていて、早くこのジジイぶっ殺されねぇかなと思って観ていたら、Aナンバーワンとシャックの最終決戦では謎の一体感が生まれ、シガレットというゴミクズ野郎の小僧の醜悪さが浮かび上がってくる。
シガレットは反権力の戦いをしている横で自分のことしか考えない日和見野郎であり、アルドリッチによるとベトナム戦争以降の世代とのことで、ベトナム戦争に対する反戦運動は挫折して、政治への興味を失いもうどうでもいいやとなっている若者に対して死ねと思っていたみたい。

数々の無賃乗車テクニックが描かれており、何か勉強になった。一方で無賃乗車マンに対する嫌がらせテクニックも描かれており、まごうことなき無賃乗車アクション映画となっている。
三樹夫

三樹夫