近本光司

ボディ・スナッチャー/恐怖の街の近本光司のレビュー・感想・評価

4.5
カリフォルニア州のサンタ・ミラという小さな町に奇妙な噂が出回りはじめる。見た目も声も記憶もすべて同じなのに、ある日を境に家族が突然別人になってしまったと証言する者が後を立たないのだ。はじめはまともに取り合わないけれど、やがてこの町から命からがら逃げ出すことになる医師の訴えから回想へとなだらかに語られてゆく完璧な導入部。わたしたちははらはらしながら、この町を徐々に侵略していく感情をもたない宇宙人との攻防を見つめることとなる。1950年代半ばの米国が陥るパラノイアが見事にサイエンス・フィクションという形をとって表現される。当時の観客はだれもがあの宇宙人たちの思想にコミュニズムを重ね合わせたにちがいない。ドン・シーゲルの演出が冴え渡る SF 映画史上の傑作のひとつ。これこそがハリウッド。べらぼうにおもしろい!