あなぐらむ

スー・チー in ミスター・パーフェクトのあなぐらむのレビュー・感想・評価

4.5
ジョニー・トー監修、名匠リンゴ・ラムが脚本・監督。共演も「新警察故事」でジャッキーとガチンコ対決して見せた足技王・アンディ・オンという事で大期待して画面に見入ったのだが…。

結論から言うと、「久々に香港映画らしい香港映画を見た」って感じか。
あらすじとしては、香港警察の女性刑事スー・チーは任務中に犯人を誤って死なせてしまい、その恐怖から休職しルームメイトのモデルの子と一緒にマレーシアに旅行する。そこで兵器密輸の取引相手と勘違いされて(いや普通ね)監視されるハメに。
ところが彼女達を監視するある組織のエージェント、アンディ・オンはスー・チーがいつも夢に見る「ミスター・パーフェクト(理想の男性)」だった…という感じ。
まぁむちゃくちゃゆるーいラブ・アクション・コメディといった趣きで。
兵器密輸の取引してるのがラム・シューとサイモン・ヤムってんですから(江戸っ子)。
サイモン・ヤムは久々に軽快な悪党(ピンクのジャケット+ヘビ皮ブーツ。闘う時には必ずタップを踏み、愛妻とダンスを踊りながら拳を繰り出す夫婦拳の使い手)を楽しそうに演じている。アンディも大金持ちの振りしてスー・チーに近づき情報を得ようとして失敗したり、ラブコメの方がメインなのでお話が全然進まない。
更にスー・チーをよく知ってるケチなスリ、チャップマン・トーまで絡んで事件は混乱混乱また混乱。
南国の綺麗な海でのジェットスキーチェイスやアンディ・オンVSサイモンの軽快で遊び心満載の対決シーンなど、アクションシーン(ジャンプしたバイクから下を通過す
る車に向けて銃撃するシーンは大迫力)も結構あるっちゃあるが、全体としてはマレーシアの美しい景色を見てぼよよーんとした気分になる事請け合いの「観光アクション映画」なんである。香港映画の主人公が南国に旅行に出たら要注意だ。

この映画、銀河映像が製作なのでジョニー・トー作品とキャストが被りまくってて、そこが一番の笑い所。前出のラム・シューにルビー・ウォン、そしてサイモン・ヤム、レイモンド・ウォンも出ているのでそのまま「PTU」が撮れるキャストなのにやってる事は全然バカ。特にラム・シューのエロおやじっぷりはかなりハマってて笑う。

スー・チーは幾つになってもこういうおきゃん(死語)な役柄をやらせると非常にハマって可愛い。アンニュイな役柄もできるのに、このキュートさを出せるのは凄い。
冒頭の奇妙なストリートガール風コスプレ?や、本人がちゃんとやったというジェットスキーによるチェイスも見所。
そしてアンディ・オン。彼の雄姿がちゃんと見られるのは、この頃は日本ではこの作品か「ブラックマスク2」ぐらいの筈。
本作ではたっぷり彼のアクションを楽しむ事ができる他、ぎこちないコメディ演技も観られて収穫。がっしりした体躯と少年のような風貌は、女性ファンにも訴求力アリ。

キャストもそうだが、これがあのハードさがウリだったリンゴ・ラム作品だという事を考えると、香港映画人のキャパシティの広さに驚かされる。疲れた時や難しい事を考えたくない時にもってこいな一作。香港映画は難しい事考えちゃ駄目。