湯っ子

山の焚火の湯っ子のレビュー・感想・評価

山の焚火(1985年製作の映画)
4.0
主演・岩、助演・動物たち。動物たち、の中にはもちろんこの山で暮らす家族も含めている。
人間を動物と同じと思うことを下等とみなすか、大自然の一部として神聖なものとみなすか。
だからこの作品の中のできごとを、文明と教育の行き届かない場所で起きた悲劇ととらえることも、神話のようなできごとととらえることもできる。

小刻みに揺れるテーブル、言葉をつぶやくはずのない口、ヘリで運ばれる牛、何か意味があるのだろうか。

生活音や岩を砕く音が響き、台詞も少ないが、ときおり流れるグワワワワ…という音、あれはなんの楽器なんだろう。あの不思議な音もこの映画の神秘性を高めていたと思う。



中学生の頃に買った「スクリーン」のお正月付録で、その前年の作品のジャケ写とひとこと紹介が載せてあるカレンダーがあった。
その頃はまだ私の家にはビデオデッキがなく、もちろん自由に映画館にも行くことができなかったので、その付録を穴が開くくらい眺め、ジャケ写からどんな映画なのかをあれこれと想像していた。我ながら、なんといじましい…、でも今考えると、それはとても豊かな時間だったのかもしれないなぁ。
その中でも禁忌と文芸の香りが漂うこの作品がずっと気になっていて、だけどなかなか出会えなかった。少女の頃から観たかった作品をついに観られて満足です、U-NEXTさんありがとう。
湯っ子

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