Ricola

山の焚火のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

山の焚火(1985年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

周りに他の家がないような山奥に住むある家族。何の変哲もない家族に一見見えるが、かなり危ういバランスを保っていた。
お互いに踏み込んではならない領域に踏み込み、普段は抑え込んでいた理性が外れた瞬間、家族という形はすぐに崩れ去ってしまうのだ。


祖父の虫眼鏡に強い興味を示す少年。
勝手に奪って、祖父母の肌や目などに近づいて虫眼鏡で興味深げに観察する。
この、「観察する」という行為は他の場面でも見られる。ただ、観察以上に監視するといった意味合いも帯びてくることもあるのだ。
それは例えば、双眼鏡で離れてある祖父母の家を彼らの家を見たり、少年が姉を覗き見ることである。
結婚当初の父と彼の母親は、日常的に双眼鏡でお互いの生活の様子などを覗き見ていたという。これは、異常なほどのマザコン気質を感じるエピソードであるが、近親相姦的な意味合いをも帯びてくるように感じる。それは姉と弟が引き起こした「出来事」ゆえに、である。

美しくただ彼らを見守る自然の描写も気になる。
風が麦畑を撫でるように優しく吹く。
パチパチと音をたてて燃え続ける焚火、
少年の積み上げた岩山、霧がかった山…。
姉と弟が一線を越えても、自然は何も語らずいつものように朝に太陽が昇って夜には沈む。

家族という関係性に、「社会」に抗った姉と弟。
それに情けなど微塵もなく制裁をくわえようとする父…。
まるで、家族という共同体を保つのに、普段はそれぞれが仮面を被っているようだ。
崩壊した後のほうが、よっぽど「自然」な姿なのかもしれない。
Ricola

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