ROY

ゴングなき戦いのROYのレビュー・感想・評価

ゴングなき戦い(1972年製作の映画)
4.6
Attaboy!

うだつが上がらないボクサーとストックトンという都市

栄光なき男たちの生き様

■STORY
元プロボクサーの男タリーはボクシングをやめ、日雇い労働で生活していた。そんな中、偶然出会った青年アーニーの才能を見抜き、彼にボクシング・ジムへ行くことをすすめる。やがてタリーの見込み通りアーニーはプロボクサーに。試合ではなかなか勝てずにいたが、ガールフレンドと結婚することにもなる。一方、酒びたりのタリーはどん底の生活を送っていた。そんな彼はアーニーとの再会を経て、カムバックを決意するが…。

■NOTES
原作はレナード・ガードナーの小説『Fat City』。彼の唯一の作品である。

多くの人から、私の本のタイトルについて聞かれました。これは黒人のスラングの一つです。「Fat Cityに行きたい」というのは、「良い生活をしたい」という意味なんだ。このタイトルを思いついたのは、サンフランシスコの展示会で安アパートの写真を見たときだった。「Fat City」と壁にチョークで書き込まれていました。このタイトルは皮肉です。「Fat City」は、誰も到達できないようなクレイジーな目標なのです。-レナード・ガードナー

撮影はコンラッド・ホール(『明日に向って撃て!』『アメリカン・ビューティー』『暴力脱獄』等)。

『タクシードライバー』はNYCを、『チャイナタウン』はLAを、そして本作はカリフォルニア州ストックトンを舞台としている。製作されたのは3作ともに70年代。本作はアメリカン・ニューシネマとも捉えられる。2012年には、ストックトンは財政破綻した。『Business Insider』によると、同市では、2019年2月から2021年1月までベーシックインカム実験が行われたという。

写真家ロバート・フランクやウィリアム・イグルストンの切り取る街並みに似た空気感。

本作は、米エンターテインメント・ウィークリー誌が選んだ「犯罪行為に等しいほど過少評価されている作品10本」(2014)に含まれている。他に挙げられているのは、『ガルシアの首』、『ローリング・サンダー』、『ニア・ダーク/月夜の出来事』、『ザ・バニシング-消失-』、『グレムリン2/新種誕生』、『ラブ・ジョーンズ』、『Little Dieter Needs to Fly』、『バンディッツ』(2001)、『Big Fan』である。(https://ew.com/gallery/10-most-criminally-underrated-movies/)

冒頭の生活感がたまらない。最後、アーニー(ジェフ・ブリッジス)を呼び止めてコーヒーを飲むも、何も話すことがなく、一点を凝視するタリー(ステイシー・キーチ)が悲しすぎる。中年アル中女オーマを演じたスーザン・ティレルも凄かった。

タリーと同じ道を歩むであろうアーニー

ボクサーを中心に据えて、人生の無常を淡々と映しているが、その背景となっているストックトンという町の場末感がたまらなく好き。

なんだろう。この言葉にできない感じ。
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