安堵霊タラコフスキー

ゴングなき戦いの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ゴングなき戦い(1972年製作の映画)
4.5
アミール・ナデリがCUTで100本の映画として挙げていたけど見ていなかったのを思い出しVHSを借りて鑑賞したけど、なるほどジョン・ヒューストン作品で一番気に入ったものとなった

この映画はアラサーのボクサーと若いボクサー、二人を対象的に描いた話だが、その対比のし方が面白く、特にラストが顕著で、若い方は負けた試合しか描かれていないのに服装がきっちりして豊かな人生を送っているように見えるし、一方で年を取った方は勝った試合が描かれたにもかかわらずボロい服のせいもありその後の人生に暗雲が立ち込めている雰囲気が感じられて実に侘しい気持ちにさせられた

加えてアメリカンニューシネマ全盛の時代らしい暗澹とした空気で包まれた作品であるものの、安易に登場人物を殺したりしてないのも好印象で、勿論ラストでキャラが死ぬ映画にも名作は沢山あるものの、この映画でそれをやっていたら評価は下がっていただろう

撮影がコンラッド・L・ホールだった点もプラスに働き、優美で端正な彼の映画の映像は相変わらずどれも味わい深いものがあった

しかしこの作品が気に入った一番の理由は、アメリカンニューシネマの大半に言えることでもあるが、こういう情けない男の哀れさに自分が共感してしまうからなんだろうなとつくづく思うのだった