むらむら

ヴァージニティ・ヒット〜苦悩と挑戦の記録〜のむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
陰キャの俺にケンカ売ってるとしか思えない、アメリカ発の陽気な童貞喪失モキュメンタリー。

主人公マットを含む仲良し四人組は、誰かが童貞を卒業するとマリファナを吸うというルールを決めていた。三人までが済んで、残るはマット。マットに恋人のニコルが出来たのをキッカケに、悪ガキたちはマットの童貞卒業をあの手この手で手伝おうとする。

ハンディカメラで撮られた映像のうち、7割くらいの台詞は出演者たちのアドリブらしい。「25年分のラストシーン」でも書いたが、外人のこの手の作品って、リア充すぎて、陰キャの俺からするとキラキラと眩しい。日陰の部屋から引張り出されて、太陽を直視させられている感じ。絶対こいつら、日本で成人式やってたら、トサカみたいなの付けて「ヒャッハー!」ってバカ騒ぎしてそうで、とてつもなく苦手。

今風な設定を入れようとしたのか知らないが、マットの童貞喪失物語は、動画共有サイトに逐次投稿されている。「こいつ童貞なんだぜー」ってのをサイトにアップすると、ネットから様々な反応があり、なかには「私が相手してあげるわよ」なんて釣りもあったりする。

さらには、悪ガキ一味は、マットの予約した高級ホテルのスイートルームの隣室を予約。マットとニコルが行為に及ぶのを、皆で、聞き耳を立てる。

どちらも、フィクションだと分かっててもとっても悪趣味。俺がマットなら人間不信に陥って、残りの全生涯、全力で自室に引きこもるレベル。

それなのに、マットもそれに怒るわけでもなく、その演出にのっかっていく。お金がない、というキャラ設定な割に、ニコルとのキメデートでは馬車をチャーター(馬車ですよ!)する。しかも「一張羅のスーツが必要だ」ってなったら、フツーに万引。別に映画の中で人殺してようがドラッグやってようが自由だけど、視聴者(俺)が感情移入できるか、と言ったら別の話。こんな童貞の筆下ろしを観るくらいだったら、実家の雪下ろしでも手伝ってりゃよかった。

後半は、ニコルとの筆下ろしに失敗したマットが、ポルノ女優のサニー・レオーネに筆下ろししてもらうパート。サニー・レオーネとイタすための資金集めに、悪ガキたちは街中で募金を募る。

「マットの童貞を捨てるために、皆さんのご協力をお願いしまーす!」

俺がマットなら、こんなんリアルでやられたら、100%自殺するわ。

このように悪ガキの無茶な行動を容認する形でずーっと物語が進行していく。生粋の陰キャで、小学校の遠足で行った流しそうめんでは、常に最下流をキープさせられていた俺としては、車高の低いタイヤがハの字型の車にハコノリしてウェイウェイ言ってるような世界観についていけなかった。この作品だけでなく、「父の秘密」や「怪怪怪怪物!」「許された子供たち」……どれもイジメシーンが強烈だけど、正直言って苦手。イジメっ子がのさばるのは、現実だけにしてほしいぜ。

ただ、友人一味のリーダーを演じだデブ(ザック・パールマン:ポスター左にて、主役みたいな顔で映ってる人)は、観ててムカムカする感じがとっても良かった。どっかで観た顔だなー、と思ったら、「マイ・インターン」で、デ・ニーロの家に居候させてもらうデイビス役。あっちは悪い子としても根はいいヤツって感じだったので、役者って凄いなーと改めて感心。

ぶっちゃけ、こういう「童貞の筆下ろし」ものなら、日本のAV作品に名作が死ぬほど転がってる、ってのが俺の意見。筆下ろしモノではないけれど、先日観た「死ぬほどセックスしてみたかった」の方が1万倍面白かった。日本のAV監督がガチのドキュメンタリーとして撮ったほうが確実に面白い仕上がりになるテーマだと思う。

なので残念ながら俺的には全く合わなかった。でも、イジメに抵抗ない人だったら、気にいるんじゃないかなー。成人式のパーティーノリを楽しむことが出来て、小さい頃から流しそうめんで常に頂点にいるような人たち(言い過ぎてたらスイマセン)。もっとも、そんな人たちは、こんな作品に触れ合う機会はないだろうけど……。

ところで、この作品のストリップ劇場のシーンを観てて、高校生の頃、俺が生まれてはじめて、ストリップ劇場に行ったときのことを思い出した。

高校生だってバレないように精一杯大人びた格好をして、バイトで貯めた5000円札を握りしめ、ストリップ劇場の前を行ったり来たりすること数十分。

精一杯の勇気を振り絞って、意を決して入場してスグ脇にあるチケット売り場に向かい、5000円札を差し出した。

「すいません、大人1枚、お願いします!」

チケット売り場のオッサン、一瞬固まったのち、大爆笑。

理由が分からなくて戸惑う俺の5000円札を受け取って、チケットを渡しながら、オッサンはこう言った。

「本当は高校生は駄目なんだよ」

……真っ赤になって、無言で、劇場に走り込んだのを覚えてる。そして、初めて見るストリップ劇場は、とても楽しかった。

あのオッサンには、今でも感謝している。
むらむら

むらむら