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ザ・シャウト/さまよえる幻響のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

3.7
「早春」で独特の作風が気になったイエジー・スコリモフスキ監督。こちらは独特超えてヘンテコ(ほめてます)。そもそもジャケが濃いい…このジャケのように怪音を叫んで殺人をおかす自称アボリジニの男の話。カルトっぽかった。カンヌでグランプリ受賞している不思議。

状況違えど、「テオレマ」にも通じる<招かざる居候>が妻への色仕掛けと夫への脅迫で家庭を壊していく。その理由がわからない。

男は悪魔にも見えるし、夫の浮気心が生み出した後ろめたい妄想かもしれない。

夫はあらゆる音を採集している自称ミュージシャンの教会のオルガン弾き。

ずっと不穏な空気が漂う。カメラワークも不安定。

男が精神病院で語る話がどこまで本当だかわからない。

不毛な砂丘に風の強い野原、突然の雨、背景も不穏だが、何をやっても少しずつ失敗する。何かが足りなかったり、壊したり、小さなイライラが募っていく。気に障る存在は男なのか。あるいは耳に入る音なのか。

主人公は夫のはずだが、語り部は男になったり、二人は一人なのかもしれない。

内臓をえぐるような狂人の話は、音に過敏になり、精神が分裂していく男=夫の妄想にみえた。

自称アボリジニといいますが、「まぼろしの市街戦」のイギリス通信兵だったアラン・ベイツではありませんか。髭生やすとワイルドになるのね。同じく狂気を表しています。

イエジー・スコリモフスキの作風は風変わりで、不穏な緊張感を表すのに長けている。ロマン・ポランスキーの「水の中のナイフ」の脚本も手掛けています。もう少し観ていきたい。
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