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ベンジャミン・バトン 数奇な人生のEyesworthのレビュー・感想・評価

4.7
監督デヴィッド・フィンチャー&主演ブラッド・ピットの『セブン』や『ファイトクラブ』等でお馴染みの名コンビが織り成す異色ヒューマン映画。

老人として生まれ、赤子として死を迎える、という本来の人間の成長プロセスとは真逆の人生を送った主人公ベンジャミン・バトンの稀有で数奇な人生を160分程の思い出アルバムにまとめたような作品。実際このストーリーは主人公が生涯最も愛した女性デイジーの病床での死に際の語りから幕を開けて、彼の日記を開いて読んでいくうちに、やがて彼女の娘にも話していななかった秘密の真相へと到達する、という構成になっている。普通とは全くかけ離れた人生にもかかわらず、育った福祉施設での良い影響もあって、他人の人生に深くかかわり、愛情をもって周りに接することができるような真人間となったベンジャミンだが、デイジーとの間に子供ができてからはその特性故に苦悩に揉まれ、やがて独自の人生を切り開いていく。

めくるめく主人公がイケメンのブラッド・ピットになっていく過程を眺め、最初から最後まで退屈することなく見れた。
人間の年齢に応じた振る舞いや表現、機微に敏感でないと作れない作品だと思った。流石フィンチャーだ。
彼の周りの人間が幸運にも非常にユニークで、宗教や思想、人種を問わない多様性のある場所だったためベンジャミンを受け入れる器として最適だったのだろう。若かりし青春時代は彼にとっては心とは裏腹に老年特有の障害にも見舞われた悲しい時期だったろうが、やがて愛する人も生きがいも見つけ、最後は大多数の他の人間と同じようにすべてを忘れて天へと魂は還っていく。そんな彼の人生は非常にエキサイティングで感動的だった。この人に関われた人々も皆幸せだったろう。
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