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ベンジャミン・バトン 数奇な人生のfumingのレビュー・感想・評価

4.4
タイトル通り、まさに数奇な運命。
生まれながら年老いた青年ベンジャミンの人生が淡々と語られ、描かれていく。
老人の見た目であったが子供なるベンジャミン、そしてケイトブランシェット演じるデイジーとの交差する2人の時間と人生がただただ儚く美しい。ベンジャミンは見た目が年老いているほど本来若い青年であり、年寄りの時代の方が様々な冒険や青春があり面白かった。若くなるほど美しいブラッドピットの顔が顕になるが、しかしさらに枯れてくる。その辺りも作劇として意識しているのだろうか。

思うに本作はデビッドフィンチャーが撮った「フォレストガンプ」だと思う。本作はフォレストガンプを意識したようなオマージュや対比が数多く見受けられる。ずっと無垢な子供のようなフォレストに対し、生まれた時から老人に囲まれ最初から大人っぽかったフォレスト。結婚相手のヒロインではなく、主人公が先に逝くなど。正直に万人におすすめ出来る面白さはフォレストガンプのほうであるが、私はこちらのほうが好みである。時間や歳月の流れ、老いを感じるテーマに弱い。

「命の意味を求めていれば人生は複雑ではない」

本作を観ていて、非常にグッときた一説である。人々にはそれぞれに人生や青春、冒険があり、それは歴とした物語である。何者かにならなければならないというような主張が跋扈しがちな現代であるが、本来我々はそんなものに囚われる必要など無いのかもしれない。歴史に名を残す人物では無いが、しかしとびきり数奇な人生を生き抜いたベンジャミンを観て改めてそう思う。
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