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ベンジャミン・バトン 数奇な人生のYYamadaのレビュー・感想・評価

4.0
【ヒューマンドラマのススメ】
 ~映画を通じて人生を学ぶ

◆作品名:
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
 (2008)
◆主人公のポジション
経年により若返る特異な男性
◆該当する人間感情 (24種の感情より)
 畏敬、悲観、積極性

〈本作の粗筋〉 公式サイトより抜粋
・2005年、病院で死の床にある老女のデイジーは、ベンジャミン・バトンという男が自らの人生を綴った日記帳を読み聞かせてくれと娘キャロラインに頼む。
・1918年のアメリカ、ニューオーリンズ。ある日、生まれたばかりの赤ん坊がある老人施設の前に置き去りにされた。赤ん坊に気付いたのは、施設を経営する黒人夫婦。赤ん坊がシワだらけの老人のような姿であることに驚くが、子供を産めない身体であった妻クイニーは、奇跡の子だと信じて育てることを決意する。ベンジャミンと名付けられた赤ん坊は「80代の老人のような身体ゆえ、長くは生きられない」と言われるが、無事に生き延び、むしろ年々若返っていく…。

〈見処〉
① 人生は素晴らしい——
フィンチャーが描く数奇な物語。
・『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は、2008年に製作されたのファンタジー・ドラマ。F・スコット・フィッツジェラルドによる1922年刊行の短編小説をもとに『フォレスト・ガンプ』のエリック・ロスらが脚本を執筆したもの。
・80代の年老いた姿で生まれ、歳をとるごとに若返り、0歳で生涯を終えたベンジャミン・バトンの奇妙な人生を数々の出会いと別れを通して描く本作。監督を務めるデヴィッド・フィンチャーは、フィンチャーと本作主演のブラッド・ピットと『セブン』『ファイト・クラブ』に続くコンビ作品となる。
・共演は、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、エル・ファニング。2008年度の第81回アカデミー賞では作品賞を含む13部門にノミネートされ、美術賞、視覚効果賞、メイクアップ賞を受賞した。

②数奇な映画製作
・本作の映画化企画の出発点は、1980年代のユニバーサル・ピクチャーズ。「ヨーダ」のパペット操作で有名なフランク・オズが監督に選ばれ、ベンジャミン役にマーティン・ショートがキャスティングされたが、オズは本作の映像化の方法を思いつかず降板。
・1991年には監督スティーブン・スピルバーグ×主演トム・クルーズにて企画化されるも、スピルバーグは『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』を優先し降板。
・長期停滞する本企画の映画化権利は、その後キャスリーン・ケネディとフランク・マーシャルに引き継がれ、パラマウント映画に企画も移動。1998年には監督ロン・ハワード×主演ジョン・トラボルタ、2000年にスパイク・ジョーンズ、2003年にゲイリー・ロスへ監督交渉が行われ、2004年にデヴィッド・フィンチャーに白羽の矢が立った。
・「老人に始まり、乳児で終わる」極めて映像化が困難な本作企画は、検討開始から約20年を費やし、ついに映像化がされたが、当時の特殊視覚効果の技術水準でもハードルは高く、最終的な本作製作費は1.5億ドルに及んだ。

③結び…本作の見処は?
◎: 突飛な設定ながら、同じ脚本家による『フォレスト・ガンプ』よりも、主人公の感情、周囲の偏見、人生の変遷をリアルに描かれている。悪人が登場せず、ベンジャミンが良識人であることも、作品に魅力を与えている。哀しさと温かさが両立している作品。
◎: 1918年から現代に及ぶベンジャミンとデイジーの数奇な人生を、移り変わるアメリカ社会とともに描かれている。まさに「映像で見るアメリカ文化史」。
○: 本作の最大の見どころである「特殊視覚効果を活用したベンジャミンの容姿の変遷」。20歳のブラッド・ピットに違和感なき視覚効果に当時は驚いたが、老人の描写においては、最新の視覚技術にて見てみたい気がする。
○: ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、エル・ファニング…。ベンジャミンが愛した女性たちは魅力的に描かれている。
▲: 上映時間165分の大作。ベンジャミンの半生が丁寧に描かれ退屈はしないが、老人期間の尺が長く、序盤を乗り越えるには、多少の辛抱も必要。

④本作から得られる「人生の学び」
・みんなと違うと感じても、たどる道が違うだけで最後は同じ。自分の道を切り刻むことが大切。
・人生は機会に左右される。一期一会を大切に思いたい。
・道を見失ったら、自分の力でやり直せばいい。
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