たけちゃん

八甲田山のたけちゃんのレビュー・感想・評価

八甲田山(1977年製作の映画)
4.5
天は、天は我々を見放した~!


森谷司郎監督 1977年製作
原作 新田次郎「八甲田山 死の彷徨」
主演 高倉健、北大路欣也


勝手にお知らせシリーズ「今日は何の日」
本日は、今を遡ること118年、1902年(明治35年)1月23日に、日本陸軍第八師団歩兵第5連隊(青森歩兵第5連隊)が青森市街から八甲田への雪中行軍訓練中に遭難し、参加者210名中199名が亡くなるという山岳遭難事件が起こった日です。

同時に今回は「午前十時の映画祭ファイナル」に合わせて、遠征して観ることの叶わない地方民のいじけ企画「自宅でゴゼジュー」シリーズのレビューとなります(笑)







さて、映画です。
1977年に映画化された本作は、リードで選んだ「天は我々を見放した」のセリフが流行語になるなど大ヒット。芥川也寸志の音楽も日本アカデミー賞音楽賞を受賞しています。


あまり邦画を観ない僕自身も、何度も繰り返し観ている稀有な作品。これは観ないとダメなやつだと思います。
ただし……
……
……

辛い😭
辛すぎる……。
とんでもない実話ですよ、これ。
日本人の実直さ、気高さ、真面目さ、勤勉さがこれでもかと描かれ、同時に、実直な縦社会だからこそ起こり得る愚直さ、愚かさも描かれる。
まさにこうした気質だからこそ、あの太平洋戦争の悲劇が生まれるんですよね。

自分の頭で考えることの大切さ。
ともすれば、みな同じ方向に向いてしまう国民性。
わが身に置き換えても振り返り反省することしきりです。



1901年(明治三十四年)秋
日本陸軍は、日清戦争では辛くも戦勝を勝ち得たものの、寒冷地では苦戦を余儀なくされた教訓を踏まえ、目下迫りつつあるロシアとの戦争も見据えての訓練の必要性から、冬季の行軍演習を立案、実行しました。
それが"八甲田雪中行軍"です。

僕も北海道の人間なので、冬の怖さは分かっているつもりです。登山も少しするのですが、冬山には登りません。
でも、晴れている日は素晴らしいんですよ~。
"白銀"とはよく言ったものです。
しかし、一旦天候が崩れると、悲惨です。
僕も何度か、こりゃ死ぬかも……と思ったことがありますよね。
そんな中、命令で山に入っていく連隊は、ほんと"スーサイド・スクワッド"( ˘ ˘ )ウンウン


雪中行軍に成功した弘前第31連隊の徳島大尉役が高倉健さん。
そして、遭難する青森第5連隊の神田大尉役が北大路欣也さん。
どちらも真に迫る素晴らしい演技で、泣けましたよ。
特に、ラスト、死体安置所に訪れる徳島大尉のシーン。ここ、高倉健さんのインタビューで見たんだけど、撮影が押して、戻ってみると寒い中、ずっと棺桶に入って待っていた北大路欣也さんがいて、それを知って別れの撮影に臨むと、黙っていても泣けてきたそうです。あの健さんの涙は演技ではなかったんですね。

そして、遭難後、直立したまま仮死状態で見つかったのが新克利さん演じる江藤伍長。この方のモデルは後藤房之助さんで、後に銅像にもなっています。

他に、弟を亡くす前田吟さんやなんとか生きて生還する村山伍長役の緒形拳さん、残念な連隊長の山田少佐を演じる三國連太郎さん、その連隊長に付き従うものの途中から神田大尉を支援する倉田大尉役の加山雄三さんなど、印象的な方がたくさん出ます。一番最初に亡くなるそり隊の兵卒が大竹まことさんだったりね。

しかし、残念なのは、防寒具などにより顔の判別が難しいところですかね。でも、CGもない時代にロケで撮影した凄まじい映画なんです。撮っただけでも凄い(゚´Д`゚)゚。

今回、古い映像しか無くてダメでしたが、今はゴゼジューでも使用された4kリマスター版があるようなので、いずれ見直したいと思います( •̀ω•́ )و✧





最後に音ネタです。
劇中、何度も歌われる軍歌「雪の進軍」
日清戦争のおりに従軍軍楽隊員の永井建子が作詞作曲したものです。「ガールズ&パンツァー」にも出てきます(ˆωˆ )フフフ…

「雪の進軍 氷を踏んで
どこが川やら 道さえ知れず
馬は倒れる 捨ててもおけず
ここは何処ぞ 皆敵の国」
ガルパンバージョンも、ぜひどうぞ( ̄^ ̄ゞ