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吸血鬼蘇るの0000のレビュー・感想・評価

吸血鬼蘇る(1943年製作の映画)
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吸血鬼研究に没頭し自らも吸血鬼になったテスラ博士なる、(そう聞くとヘルシング要素入ってるっぽいけど特にその設定は活かされず)ぶっちゃけドラキュラと違いのない人物をルゴシが演じる、コロンビア社の映画。
イゴールやレンフィールドの役割に当たる手下キャラが狼男なのは同時期のユニバーサルのモンスター共演ものに対抗してか。
本家ユニバーサルじゃなくても演出も美術も一級で、特にスモークがモクモクで良い。
監督は二人になってるけど一人はユニバーサルホラーの傑作『大鴉』の人ルーランダースだしもう一人は20世紀フォックス最高傑作『蝿男の恐怖』の人カートニューマン(資料によってはニューマンのほうは監督でなく原案になってる)。

時にドラキュラ復活を助け、時に破滅へ導く、怪異よりも上位の恐怖存在として、どうしようもない抗えない運命のようなものとして、物語の転換点で複数回に渡って襲い掛かるナチのロンドン空襲。空襲後の白昼の廃墟の街で相打ち共倒れになるドラキュラと狼男。ゴシックホラー映画の終焉を、というよりいわゆる「大きな物語」的なもの(ここでは「大きな闇の物語」と言うべきか)の断末魔を象徴づけるかのような映画。作り手による無意識の社会的不安がこのストーリーに表れているという見方は容易にできる。戦後、やがてこの廃墟と焼け野原の影に今はまだひそんでいる新しい種類の怪異たち、突然変異の怪獣や宇宙からの侵略者の時代がやって来る、その前日譚を見るかのよう。

そして実質の主人公がシガニーウィーバーを思わせるような、一人率先して吸血鬼討滅に挑み続ける独立した女性というのも画期的かつ予言的で感動的ですらある。

ラストでは、後のハマープロのドラキュラシリーズで繰り返される顔面朽ち果て特撮が登場(吸血鬼に限定しないホラー映画で最初にやったのは多分『ミイラ再生』)。これがドロドロ溶ける系で中々のグロビジュアル。モノクロながら普通に『吸血鬼ドラキュラ』のラストより全然グロい。

コメディ部分でも、警察署長の人がうまくて、報告を聞いて一旦椅子に座りかけてかけてからの「ええっ!? 狼男だって!?」的なリアクション芸とかタイミング抜群で最高だった。

『吸血鬼蘇る』というよりは、「吸血鬼死す」って感じの映画史的記念碑。
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