爆裂BOX

クライヴ・バーカー 血の本の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.6
超心理学者のメアリは霊能力者の青年サイモンを雇い、幽霊屋敷として有名な「トーリントン・ハウス」で霊界の存在を証明する実験に着手するが…というストーリー。
あけましておめでとうございます!今年も宜しくお願いします!という事で新年一発目はこちらをレビュー。
「ヘル・レイザー」等で有名なクライヴ・バーカーの初期傑作短編集「血の本」のオープニングとエピローグに当たる部分を映像化した作品です(邦訳版では最終巻「ラスト・ショウ」の最後に収録されてます)
メアリは助手とサイモンと共に幽霊屋敷での実験を始めるも、不可解な音や監視カメラの異常が起き、やがてサイモンの皮膚が裂け、血で描かれた文字が現れ始める。死者たちが自らの言葉をサイモンの肉体に刻んでいたのだ、という内容です。
レストランでぎこちなく食事する全身傷だらけの青年サイモンが、彼の皮膚を所望するコレクターに渡す為、仕事人に拉致されてそれまでの経緯を説明する冒頭から引き込まれましたが、続けざまに少女がポルターガイストに床を引きずられて壁に叩きつけられて、ベッドの上で顔を剝がされるシーンでツカミはバッチリです。
そこからは超心理学者のメアリが助手と、かつて兄の死を予知したという霊能力を持った青年サイモンと共に幽霊屋敷の調査を始め、冒頭のようなグロ描写もなく、静かで地味な展開が続きます。ただ、全体に漂うジメェ~っとした暗い雰囲気やゴシックな感じが良くて個人的には飽きませんでした。屋敷内の音をマイクで拾っていると、大勢の人の囁き声が聞こえる所は不気味で良かったです(ここで日本語も流れてるのちょっとビックリした)やがてサイモンが怪現象に襲われ傷を負わされますが、二回目の襲撃後に部屋中の壁や天井にびっしり文字が書かれている所もギョッとさせてくれます。
大学に編入生として現れた時から彼に惹かれていたメアリが、屋敷に来てから彼との淫夢を見たり、サイモンの傷の治療中にそのまま関係もったりという倒錯的なエロティシズムはバーカーっぽいなぁと思いました。
後半、明らかになるサイモンの秘密は二回目に襲われた時に叫んでいた言葉から予想は付きましたが、そこからのクライマックスの死者の交差点にずらりと並ぶ死者の行列と彼らサイモンの皮膚に自らの言葉を刻んでいくシーンはインパクトありました。ここの幽霊たちの中に芸者がいるのはちょっと笑っちゃったけど(笑)少しずつ傷のように文字が皮膚に刻まれていく描写は痛々しいですね。
最後のスーツケースから流れる血の洪水シーンも印象に残りました。サイモンは自業自得な部分もあるとはいえあそこまでの目に合わされるのは流石に可哀想。メアリは霊界に触れて死者の言葉を伝える事が自分の氏名だと思ったのか。
クライヴ・バーカーの名に「ヘル・レイザー」のような映像期待すると、冒頭と終盤以外そういうシーンないので大人しめに感じられると思いますが、全体に流れる雰囲気など個人的には飽きずに最後まで見れたオカルトホラーでした。
繰り返しになりますが、今年も宜しくお願いします。