桃子

ピグマリオンの桃子のレビュー・感想・評価

ピグマリオン(1938年製作の映画)
4.0
「気の毒な原作者」

原作はバーナード・ショーの同名の戯曲で、かの有名な「マイ・フェア・レディ」と同じ元ネタである。これも知らなかった~~(^_^;) ヒギンズ教授を演じているのが、レスリー・ハワードである。
「風と共に去りぬ」を初めて見たのがいつだったのか、もう覚えていないのだが、(スカーレットはなんでまたアシュレーなんていうヘタレな男が好きなんだろう?)と思ったような気がする。その軟弱アシュレーを演じていたのが、レスリー・ハワードである。正直、アシュレー以外の役を演じている彼を見たことがなかった。この映画で初めてアシュレーではないハワードを見たことになる。
ヒギンズ教授は、かなりエキセントリックな人物である。言語学者としては優秀だが、自己中で冷酷でKY。当然ながら女性が寄りつかないけれど、そういうことも全く意に介さない。自分さえよければそれでいい、というトンデモキャラに設定されている。この時代の映画の常で、ハワードは早口に台詞をしゃべる。マシンガントークがなかなか面白かった。
イライザを演じているのは、ウェンディ・ヒラーという女優さんだが、私は初見だった。素晴らしい演技をしている。この映画がデビュー作だなんて、すごすぎる!!もっとも、10代の終わり頃から舞台女優をしていたというから演技の土台はしっかりできていたのだろう。この映画自体、日本では劇場未公開だったし、晩年はテレビ映画の方に出演していたせいか、あまりなじみのない女優さんである。「旅路」や「オリエント急行殺人事件」に出ているようなので、是非チェックしてみたい。
原作者のショーは脚本もてがけている(と言っても、単独ではないようだ)。試写会で初めて完成した映画を見て、原作と全く違うエンディングなので驚いていたという。原作者に内緒で結末を変えちゃったのかい!!ひどいなあ…
この映画では原作とは違って(原作を読んだことがないので詳細はわからないけれど)ハッピーエンドを匂わせた終わり方になっている。私的にはイライザはヒギンズ教授と結婚しても幸せになれないと思うのだけれど、はっきり別れるシーンで終わるのは悲しいということでこういうエンディングにしたのだろうか。こういうところは映画製作者の軟弱さを感じてしまう。原作者が脚本も手伝ってくれたんだから、敬意を表して原作通りにすればいいのに。バーナード・ショーが気の毒だなあ、なんて思ってしまった。
桃子

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