こたつむり

血を吸うカメラのこたつむりのレビュー・感想・評価

血を吸うカメラ(1960年製作の映画)
2.9
♪ カメラの中の3秒間だけ僕らは
  突然恋をする そして全てわかるはずさ

1960年に劇場公開された作品。
今から63年前ですね。それだけ聞いてもあまり昔に感じないのですが、そこから更に63年戻ると19世紀になっちゃうわけで。価値観がガラリと変わるのは当たり前です。

だから、当時は刺激的だったとしても。
今の感覚で捉えたら温く見えても仕方がないですよね。

何しろ、血糊が飛びまくるのは70年代。
内臓グチャグチャは80年代。コンピュータグラフィックスが花開く90年代を経て、21世紀に住む僕らは刺激に慣れてしまったんです。

確かに昔の僕も初心(うぶ)でした。
「戦争映画とか人が死ぬ映画を観る気持ちが分からない。ましてやスプラッタなんて××××が観る映画だ!」なんて言っていたのですから…いやぁ。時が流れるのは速いなあ。

って個人的な感慨はともかく。
本作の感想に戻ると、60年代っぽいモタっとした感じがちょっと辛い作品でした。

配役も微妙な感じ。
端役だと思っていたらヒロインだった!なんて驚きもあり、ビジュアル的にレトロな感じは否めません(主人公の目力の強さは良かったですが)。

ただ、価値観の違いを知るには最適。
特に、当時の映画撮影の状況が伺えたのが面白かったです。カメラから被写体までの距離を調べるとか、勝手にピントが合ってくれる現代では分からない話ですね。

あと、原題は『Peeping Tom』なんですけど、カメラの向こう側から“覗く”ことが“新しい時代”だったんだなあ、なんて、異常心理の変遷を知るにも良いと思います。

なお、エロティックな場面は皆無に等しく。
当時は物議を醸したそうですが、今の価値観で言えば、下手したら『コロコロコミック』のほうが刺激的だと思いますんで、鼻の下を伸ばしてもダメだと思います。

まあ、そんなわけで。
「え?これで上映禁止になっちゃったの?」と違う意味で驚きに満ちた作品。もっと強い刺激を欲しがる…そんな現代人にはちょうど良い案配かも。本作を鑑賞して襟を正したいです。きりっ。
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