《あらすじ》
中国武術家のお坊ちゃん、アタオの結婚相手、弓子は日本武術の達人だったため、中国と日本、どちらの武術が優れているかで壮絶な夫婦喧嘩になってしまう。忍術までアタオに否定されてしまった弓子はついに日本に帰国。アタオは弓子を呼び戻そうと挑戦状を送って挑発するが、それを見た弓子の武術の師匠や仲間が誤解して中国へ乗り込んでくる・・・・。

前半は、新妻、弓子が力を持て余して、武術で像や壁を壊しまくる、日本の武器を振り回す、あげくの果てには忍者装束で暗殺技で襲ってくるなどやりたい放題で爆笑。夫婦ケンカも中国武術と日本武術の争いをコメディタッチに描いていておかしい。なんと言っても弓子役の水野結花のアクションがなかなかのレベルで盛り上げてくれる。ひょっとして、これって隠れた傑作？
と思いきや、後半は、アタオ対日本武術家七人のバトルばかりで飽きる。弓子はほとんど活躍しない。ラストも、全勝したアタオが日本武術家たちに非礼を詫びて和解したところで突然エンドだ。本作はアクションはすごいんだけど、途中からお笑いの要素がほとんどなくなってしまい、ひじょうに残念な一本である。

特撮ファンには倉田保昭（『闘え！ドラゴン』の不知火竜馬）、八名信夫（『秘密戦隊ゴレンジャー』の黒十字総統）、大前均（『電子線隊デンジマン』のバンリキ魔王）の出演が嬉しい。ただし全員、声は向こうの声優が吹き替えているけど。

これ昔に観たの忘れてました…
八名信夫さんが出てます！

以前鑑賞。

ある種のナショナリズムに立脚した文化的優位性という自尊心が、異文化に対する侮辱のような攻撃性を一度露骨に獲得してしまえば、「よろしい、ならば戦争だ」として勃発する衝突はなかなか回避されないのかもしれないけれど、それでも「殴り合えば分かり合える」という理想を呈示した真っ当に素晴らしい作品。

空手や柔道をはじめとした色とりどりの日本武術の達人たちに対して、リュー・チャーフィーは一人で中国武術の数々を体現し、彼らと連日拳を交えて勝ち進んでいくワケなのですが、異文化同士がぶつかり合うモチーフにおいて心底感心させられるのは、その第一段階としてまず「己をよく知る」という行為を実践している点であります。

リュー・チャーフィーがイチから酔拳を学び、中国の武具の特性を改めて認識し直すという一連の行動は、今まで当たり前に誇ってきた「自分の文化」を積極的に見つめ直す、必然としての誠実さに他ならないと思うワケです。

その上で、相手を知る。

しかし簡単に分かり合えたら苦労はないワケで、それぞれの文化が包容する武術としての多様性を表出させながらも、毎日毎日身体と身体でぶつかり合っていくという究極の脳筋コミュニケーションによって、真の異文化理解と確固たるリスペクトが構築されていく。
なんて真っ直ぐで清々しい映画なのだろうと、私は思わず一人部屋の中で涙を流しながら拍手をしてしまった次第なのであります。
（その後なんか微妙に恥ずかしくなってしまって、衝動的にiPadで頭を殴ったらそれなりに痛くて結構苦しんだんですけどね）

今作を観て思ったのですが、武術とはコミュニケーションであり、相互的な実在の肯定である。

積み重ねられた鍛錬が精神を修養し、他者とぶつけ合うために肉体を再構築して、技と心のやり取りの中で時間と空間を共有しながら、「我殴る、ゆえに我あり」と「我殴られる、ゆえに我あり」という実在と認識の在り方が渾然一体となって、「我ら殴り殴られる、ゆえに我らありまくり」としてお互いとまたそれぞれの抱えるものまでもが等しく肯定されていくのだなあと。

リュー・チャーフィーの鶴形拳も、倉田保昭の蟹形拳も、達人同士の拮抗した技の応酬によって互いが互いを形象として認識し合い、鶴と蟹による珠玉の攻防が繰り広げられるワケですが、鶴蟹合戦ならずとも、鶴が千年ならば蟹は天然。ほとんどの種類の蟹を養殖する技術は確立されたらしいけど、コストが見合わないからまだ商売には向かないんだって。これを読んでくれているみんなの中から、養殖技術を発展させて毎日蟹味噌が食べられる未来を僕に届けてくれる、そんな天才が出て来てくれたらいいなあって。