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黒い十人の女のkojikojiのレビュー・感想・評価

黒い十人の女(1961年製作の映画)
3.6
No.1691 監督:市川崑1961年作品

 この映画を観る前に、バカリズムの「黒い十人の女」を観ている。
 これがバカに面白くて、これを市川崑がどんなふうに撮っているのか楽しみだった。
映画はモノクロの映像。音楽、ストーリー展開も当時にしては相当斬新だったのではないかと思える出来だ。大映は市川崑に自由にとっていいといったらしい。それが理由かわからないが、のびのびしている感じがすごくする。

 主人公の男は東京のテレビ局のプロデューサーカゼ(船越英ニ)。美しい妻・双葉(山本富士子)がいながら、テレビ業界に関わる9人の女と浮気していた。しかも全く真剣さがなく、女を渡り歩くような男だ。こうでないと9人の女と並行して浮気はできないだろうと思う。
 妻・双葉と9人の愛人たちは、やがてお互いの存在を知るようになり、奇妙な友情が芽生えてゆく。
そしてこの十人の女は、カゼの殺害を企てるのだが。

 結局私にはこの奇抜な設定とアイデアがバカウケしただけに、ドラマを観た後だけに、映画では新鮮味がなくなっていて、かなり評価を落とした。
 それに加えて、バカリズムの独特の面白さが今の我々には合っていたらしく、断然バカリズム版が面白かったし、笑った。
 バカリズム版では十人の個性がしっかり出ていたが、この映画では主役級と「その他」にしっかり分かれていて、これが不満だった。

 映画のこれ以外の見どころは、なんと言っても共演者だろう。
船越英二、山本富士子、岸恵子、岸田今日子、中村玉緒の豪華共演。
主人公のカゼ役船越英二は、この時代にこんなナヨナヨ役は彼しかできない役柄だけにピッタリ。バカリズム版では息子の船越英一郎
が演じてそれなりに良かったが、これは親父に軍配を上げる。

 共演の中では、特に山本富士子と岸恵子のがどんな火花を散らすのか、すごく楽しみだったが、これは流石に見応えあった。
 今朝観た「夜の河」では京都弁の女性を演じていた山本富士子が、この映画では東京の山の手の「ザマス」奥様。これがまたピッタリで、さすがと思わせる。役者だなあと感心した。
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