ゆーさく

愛と追憶の日々のゆーさくのネタバレレビュー・内容・結末

愛と追憶の日々(1983年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

1983年のアカデミー賞作品賞受賞作。

神経質に娘を気にかける母親オーロラと、
母親の反対を押し切って教師と結婚した娘エマ。
それぞれの生活と恋愛を十数年に渡って追いながら、母と娘の共依存的な関係をユーモラスに描いた家族ドラマ。


これがアカデミー賞作品賞かぁ?って感じやった。
時代のせいなのか、アメリカという国の考え方のせいなのか、この映画で描かれる価値観や倫理観みたいなものが、どうも信用できなかった。




エマとフラップの夫婦はお互い浮気してるのに、エマが堂々と夫の浮気を糾弾するのが不公平過ぎないかと思った。

夫の浮気はバレてしまい、それを妻からエラい勢いで責められまくるけど、妻の浮気はバレることなく一時の美談のように終わって、それ以上追求されない。不公平じゃないか。

でもまあ、そこが人間のリアルでもあるか。
自分の罪には目が行かない人間の不完全さや身勝手さを描いてるんかもしれん。

あるいは、この物語がエマとそれを擁護する母親の視点でしか描かれてないから、物語そのものが彼女を擁護する作りになってしまっただけかも知れない。
仮に夫フラップの視点で描かれてたら、妻の浮気を糾弾する作りになったんかな。






俺がこの映画で一番共感出来た人物はエマとフラップ夫婦の長男やった。
本当にもろもろ不憫だったし、味方になってあげたかった。

夫婦の口論がヒートアップして、家の外まで怒鳴り声が響いてくると、家の外にいた長男は、歩いて家から離れる。
追いかけて来たエマが「家の近くにいなさいって言ったでしょ」と叱ると、
「近所中に聞こえて恥ずかしいから」と答える長男。

両親の口論なんか聞きたくないのが普通の感性やのに、母親は「生意気言っていいのは一年に一回だけよ」とすげなく答えるだけ。

エマって子供に全然謝れへんよな。自分らに非があってそれを子に咎められても怒鳴りつけるだけ。人として嫌いやったわ。幼稚で。



終盤、なんの脈絡もなく急に取ってつけたみたいにエマが病気になる展開、俺はちっともハマらんかった。

母娘の愛情関係を分かりやすく描写するためのツールに病気を使いおったんやなとむしろ不満が残った。



病院帰り、死期の近い母親からのメッセージを素直に受け止められず、ついつい母親への悪態をついてしまった息子を、オーロラがドエライ力でビンタしたシーン。思わず舌打ち出たくらい腹立ってもうた。
「バアさん、なにしてんねん!」って。
「このバアさん、人の心ないんか…」って思った。
長男が本心で言うてない事ぐらい分かるやろうに。
母親が間もなく死ぬことを少しずつ受け入れていく段階でついつい吐いてしまった反発の言葉やんか。。

オーロラは大人なんだから、察して静かに諌めてやれば良いだけなのに。
母娘揃って、ホントに子供への気遣い無いなぁ。。。



その反動でか分からんけど、ジャック・ニコルソン演じるギャレットは好きやった。

女性を見境なく口説きまくるし、下品で気遣いの無い奴やけど、そんな欠点ありまくりの自分を分かってるから取り繕ったりしないし、人を貶したりもしない。
なんだかんだ子供にも丁寧に接してるしな。

自分勝手な登場人物ばっかり出てくるこの話の中では、自分の非を認めてる分、一番の真人間やったんちゃうか。




とにかく主役の母娘をまったく好きになれなかったってのが本音。
人間味として描かれたこの母娘の欠点の部分、人としてのリアルな部分が、俺には許容出来なかったんやと思う。
ゆーさく

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