あなぐらむ

裸体のあなぐらむのレビュー・感想・評価

裸体(1962年製作の映画)
3.9
永井荷風原作。溝口の「赤線地帯」の脚本家・成沢昌成の監督第一作となる。

心は子供のまま、肢体だけ大きくなってしまった様な女が、その「躰の価値」を知り男の海を泳いでいく様を、少し突き放したような視線で見つめる。のちの東映東京「かも」等の夜のおんなシリーズへと続く成沢のカラーが早くも出ている。

女の”裸の経済学”の前で右往左往する、男の見せかけの「経済」や「政治」「芸術」がかなりシニカルに描かれ、見ていてヒリヒリ来る。これは批評家たちへの皮肉じゃないかなぁとも思う。
主演の嵯峨三智子(雷蔵とも共演多し)は、この蓮っ葉なのか、ちょっと足りないのか分からない娘を溌剌と好演。
独立プロだが各社有名俳優もご祝儀出演。長門裕之が軽妙で楽しい。山田五十鈴まで登場してびっくり。
進藤英太郎は「赤線地帯」つながりか? 松尾和子が歌を披露していて素敵。この年はやっぱり女性映画の当たり年だなぁ。