KnightsofOdessa

ストレンジャー/謎のストレンジャーのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

3.5
No.204[ナチは見た目じゃ分からない] 70点

この手の先見の明があるウェルズは1946年にナチス残党狩りというテーマを持ってきた。しかも当時はニュルンベルク裁判真っ只中な上、その場にいない人間(ボルマン、アイヒマン、メンゲレ、ミュラーなど)がどこにいるかなんか戦後の混乱と冷戦と巧妙に張り巡らされた地下組織の影響で全く分からなかったのだ。ウェルズはいつだって外枠から面白い。加えてロビンソンが真相を追い回すと聴いた時点で「深夜の告白」を思い出して傑作と信じ切っていた。が、適度な緊張感と光と影を強調した画作りによって既存の"ウェルズ映画"という道筋を辿り直す真面目な映画だった。ウェルズとロビンソンがいなかったらどうなっていたことか。

本作品の本当の恐怖は赤狩り直前の空気感を掬い取ったことであろうか。アメリカも戦争終結直後で少し浮かれている部分もあっただろう。無知なマリーはまさしくナチスの蛮行を知らなかった当時のアメリカ人を体現していると言える。隣人が"あの"ナチスかもしれないという計り知れない恐怖をマリーを襲う。ウェルズもロビンソンも大陸側の人間として無知なマリーを厭らしく追い詰める。やがて立場が逆転すると影を作る人間も反転し、ウェルズが追い詰められる。逃げ場を失ったウェルズは自ら時計台に赴き、ロイドが成功した時計台ギャグに失敗して墜落する。

途中からロレッタ・ヤングが「シャイニング」のシェリー・デュヴァルに見えてきて困った。それと、ロビンソンがちゃんとパジャマ着てるの可愛かった。流石は推しメン。
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