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サボタージュのkojikojiのレビュー・感想・評価

サボタージュ(1936年製作の映画)
3.4
1938年 イギリス作品
ヒッチコック20/53

ヒッチコックの面白さの萌芽がみられる。

サボタージュとは、正しい意味は労働争議の一部として実施される破壊行為。現在では権力者に対する抗議行動としての破壊行為全般を意味する。

映画館を営むヴァーロック(オスカー・ホモルカ)は裏の顔で破壊活動を行っている。
警察はすでにこの男をマークしており、隣の八百屋に刑事スペンサー(ジョン・ローダー)を店員として見張らせていた。
しかし、スペンサーは内定するうちに、ヴァーロックの妻(シルヴィア・シドニー)と親しくなってしまう。

破壊活動を計画している時間にスペンサーが居合わせることになってしまったヴァーロックは、やむなく義理の弟の少年に爆弾を預ける。少年は何も知らず、その仕事を引き受ける。

爆弾を運ぶ少年は、少年らしさから、途中途中で寄り道をする。
爆弾は時間がくれば爆発する仕掛けになっているから、観客はハラハラドキドキの状態が続く。こういう場面に持ち込んでいく展開のうまさ、少年の行動が一つ一つ気になる作りがヒッチコックならではだろう。

この映画では、破壊工作を行うヴァーロック役オスカー・ホモルカが異彩を放っている。
眉と眼鏡鋭い顔立ちが個性的だが、特に彼の目の輝きは大写しするシーンが多くその輝きが印象に残る。

この目の大写しのイメージは、トリフォーの映画術で取り上げられている「カット割り」の素晴らしさを強調する殺害シーンで印象が強い。

どうにもならないと思ったラストに、しっかりドンデン返しを準備している。流石にここはヒッチコックだ。
つっこみたくなるシーンはたくさんあり荒削りだが、初期ヒッチコック作品として楽しめる。

2023.04.02視聴140
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