dieBananaSuki

妖刀・斬首剣のdieBananaSukiのネタバレレビュー・内容・結末

妖刀・斬首剣(1985年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。
ふたりの剣士の戦いを描くだけでどう尺をもたせるのか観始めたときは不安だったのだけど、その不安は割と的中して、脚本はヘンテコな仕上がりだった。だけど、いくつか香港映画を見てきて、そんなことを思うのはたぶん観るときの自分がフォーカスする部分を間違えているだけなのかもしれないと思ったりする。たぶんこれでいいのだと思う。
映画の脚本でよく言われるサプライズニンジャ理論というのがあって、ある場面で突然忍者が出てきて面白くなるようであれば、その場面は面白くないというものだ。本作はサプライズニンジャがめちゃくちゃあって、しかもそのどれもがすごく面白い。突然出てくるという意味ではなく、マジでサプライズな忍者も出てきたし。複数の忍者が合わさってでかい忍者になっているあれのこと。こんなんサプライズ以外の何物でもない。
本作はアクションシーンがめちゃくちゃいい。冒頭で主人公が胡坐かきながら浮いて高速でバックして建物から飛び出てくる。こんな感じで異常なアクションばっかりしてる。そりゃあ、いいとしか言えんでしょう。忍者が凧で現れたり、ハチャメチャな忍術を駆使して戦ったりするし、その上武侠映画なので、人がクルクル回ったり、水平に飛んだりするので、外連味の塊で味付けがものすごく濃い。そのうえ、カットがつながっているのかよくわからない(人がクルクル回っているカットが数回つながっている。たぶん位置関係がわかりづらいからかな)ので、アクションシーンが異様なテンポ感を持っている。それが顕著に出ているのがラストの決闘シーンだ。崖の上で剣士がしのぎを削る戦いをしているのだが、とにかくクルクルして、空中で剣を足場にしてさらに飛んだり、またクルクルしてて、ほんとうに何が起きているのかわかりづらいのだが迫力と美しさが全面に出ていて、すごいとしか思わない。チン・シウトンすごすぎる。こんなアクションが定期的に挟まれるのでデタラメに面白い。剣戟も美しいし、観ているだけで楽しい作品だと思う。
あと語るべきはラストのショットだろう。むなしさ、激闘の余韻、武闘家のどうしようもない運命、それらが混じったあのショットの良さよ。あれがあるだけでそれまでのデタラメさが一気に締まる。
イマイチかもと思ったけど、なんか感想を書いているうちに傑作かもしれないと思い始めている。また時間を空けてみてみるか。