Ren

さんかくのRenのレビュー・感想・評価

さんかく(2010年製作の映画)
4.0
世界一ダセぇ車ここにあり。日常ラブコメのように始まり、やがて暗部を浮き彫りにしていく語り口は『ヒメアノ〜ル』で一旦完成するけど、その片鱗を大いに匂わせる良作だった。まさかのJホラーも感じる作品とは....。

ちょっと台詞回しがぎこちなかったり、演技が微妙な人がいたりと荒削りな部分も感じたが、それを差し引いて余るほど脚本が良かった。𠮷田恵輔監督は常に観客をヒリヒリさせるし、常に物語にほんの少しの光を差し込ませる。

彼氏と彼女とその妹の同棲生活から始まる歪んだ三角関係の話。どろどろの恋愛の話か、もしやNTR的な展開になっていくのかと勘繰る観客の首根っこを監督は引っ掴んでくる。初々しさと可愛らしさと憎たらしさを兼ね備えた元AKB48の小野恵令奈を起用したところがシズル感。

「好意」とは、当人Aが対象者Bへ一方的に向ける矢印のこと。矢の先を向けられたBの嫌悪感も恐怖も、矢を突きつけるAの傲慢さも身勝手さも、ひたすらに気持ち悪く見せてくれた(見せてくれなくていい)。得てして人間は、Bの立場に立たされたときは敏感になるが自分がAになることには鈍感。これ自体は当然のことだけど、それを軽薄でダサい百瀬(高岡蒼甫)、面倒くさいメンヘラ(大嫌いな言葉だけどあえて使う)彼女の佳代(田畑智子)、要領が良くタカビーな桃の3人が適材適所で再現していた。
某人が無意識に向けていたヘイトの矢印がそのまま物理的に跳ね返ってくるシーンは、まさにこういう 矢印を向ける/向けられる 関係を如実に表していて最高だった。

映画だからカリカチュアライズされているけど、「好意という名の暴力性」、これ自体は恋愛をする上で誰もが自覚的でいなくてはならないとも強く感じる。

日本の映画界は、こういう監督はぜひ大切にしてほしい。多作で打率が高くかつオリジナル脚本を書ける若手〜中堅の監督という意味で、𠮷田恵輔監督、今泉力哉監督、松居大悟監督の作品はとりあえず観たいと思える。

【余談】特に意味は無いけど、自分の大好きなバンド サカナクションの『ドキュメント』という曲のMVのリンク。

『サカナクション / ドキュメント -Music Video-』
https://youtu.be/YXJso0ALWvk
Ren

Ren