Jun

機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-のJunのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

TVシリーズの熱心なファンが否定的なコメントを出していたりと、傍から見ても賛否両論の色が強いと感じられた『機動戦艦ナデシコ』劇場版。TVアニメーション時の魅力と言えば、ラブコメを基調としながらもシビアに展開される戦争ドラマや1970年代ロボットアニメへの憧憬を織り交ぜた重層的な作風と捉えていたが、今作に限ってはメインキャラクターの背負わされた運命があまりに過酷で重い。馴染みのメンバーが集い、それらを笑い飛ばすほどの熱量かと問われるとそうでもなく、劇中の言葉を借りて同窓会と呼ぶに相応しい落ち着きっぷりだ(過去作を彷彿させるコミカルなシーンもないわけではないが)。そして物語も映画らしくダイナミックに切り出したものの、後半はやや性急で事件の規模に比してこぢんまりとした印象も拭えない。が、この映画、単体で語るか後発の二つのファンアイテムとも呼ぶべき作品を押さえているかで話が変わってくる。それは、TVシリーズから劇場版への過程を補完する小説『ルリ AからBへの物語』、劇場版の音声にプロローグとエピローグが追加収録された<特別編>と銘打たれたドラマCDの存在だ。これらに触れておくと、様変わりした主人公・ヒロインの姿に戸惑いを覚えた劇場版も、主人公の座を継いだホシノ・ルリの目線を通した物語として解像度がぐっと増し、魅力的に映る。確信に満ちた笑顔と共に語る彼女の言葉とエンディングの「Dearest」で私は泣いてしまったよ…。納得のいかないファンの方の気持ちの置き場を思うに、続編の制作が絶たれたことで作品の結末が宙に浮いた状態となってしまったことがこの作品の惜しむらく点ではないだろうか。
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