千年女優

どついたるねんの千年女優のレビュー・感想・評価

どついたるねん(1989年製作の映画)
3.5
1980年代後半の通天閣にほど近い大阪の西成区。ボクシングに全てを賭けて来た粗暴な男で、試合中のKOによる脳挫傷で一命を取り留めながらも選手生命を絶たれた安達英志。ジム経営での第二の人生を歩むも荒々しい指導方針から練習生に逃げられて失敗した彼が、死を厭わず再びリングへ戻る様を赤井英和主演で描く阪本順治監督作品です。

阪本順治の監督デビュー作で、現役時代に「浪速のロッキー」の異名を取って作中の主人公同様KOによる脳挫傷で選手生命を絶たれた赤井英和が抱く再起の願いをスクリーンで叶えるために作られた作品で、赤井だけでなく作中でKOを食らわす相手役に現実の世界でもそうだった大和田正春をキャスティングする等半自伝的映画となっています。

良くも悪くも赤井英和ありきで彼のボクサーとしての現役生活への思い入れ次第な部分はありますが、拳でしかものを語れない男の彷徨いからの復活への道筋を原田芳雄や相楽晴子らの脇を固めるキャストが支えます。もはや味方のいなくなった街を通天閣から見下ろし、恐怖に慄きながらも今ある概念に文字通りのパンチを食らわす一作です。
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