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どついたるねんのcのレビュー・感想・評価

どついたるねん(1989年製作の映画)
3.8
またひとつボクシング映画の傑作に出会うことができた。
赤井英和演ずる若いボクサーは、とにかくむちゃくちゃ乱暴で、性悪。感情移入するのを拒まれているかのような気持ちになる。こういうタイプの男に感情移入してゆくのは、本音や弱さが垣間見える時であると思うが、それがまったくと言っていいほどない。あっても、彼自身の中で完結していて、こちらにあまり関係ないところで起こっているような感じ。
それは観る側が「上から目線」になるということがなく、常に観る側とアイツは「同じリング上にいる」という感じがした。
こんなにも入り込む余地がないそれなのに、それでも、どうしてだか観ているうちに込み上げてくる思いがあり、涙がでる。私が泣いてどうすんねんという感じなのだが。
自分にはボクシングしかないんだという胸の内は、単純でありながらも底に目を向ければ向けるほど暗く深い広がりにはまっていく恐ろしさがある。
「どついたるねん」という言葉の軽みに救われる思いだった。
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