後期作と前期作を交互に見ているが、前期の寅さんの方が好きだ。
前期の寅さんには、立川談志の言うような江戸の風が吹いている。
「浮気は男の甲斐性よ。女にモテねえような男じゃつまらねえじゃねえか」
と男を立てながら、妻の言いたいことも代弁し、二人の仲を取り持つ寅さん。
毎作ごとに繰り返される歌と宴会シーンがとても好き。
どうしようもない男なのに、妙に筋は通っているのがまた面白い。
どうしようない人たちのドタバタ劇は、落語譲りの無形遺産だ。
BGMが台詞をつぶしていたり、カットが長かったりと、監督交代による冗長さはあったが、車寅次郎の魅力はそのまま。
それと同時に、前作まで撮ってきた山田洋次のセンスが恋しくなった。