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男はつらいよ フーテンの寅のmatchypotterのレビュー・感想・評価

3.7
《ご長寿の映画》、Vol.12。
『男はつらいよ』3作目。フーテンの寅。

本作は監督が山田洋次ではない。そんなパターンがあるなんて知らなかった。
だからなのか、確かに少し雰囲気が違う。

冒頭の賑やかな旅館で出てくる女中さん、樹木希林じゃないか。めちゃくちゃ若い。

途中から寅さんのフーテンの旅先の三重県の湯の山温泉に舞台が移ってロケーションが自然に囲まれて雄大というのもあるが、全体的にわかりやすいと言うか、コントじみてる。

良い意味で観やすいかも知れない。
そして、何より寅さんの台詞が長いこと長いこと。酔っ払ってクダを巻いてグダグダと口からたらたら出てくるあれやこれ。

何かこれを誰も大して聞いてないのに気持ち良さそうに喋り通す寅さん見てるだけで陽気な気持ちになってくる。

フーテンの寅、いつもの葛飾の団子屋でも、女将さんに惚れてふらりと居候の番頭を決め込む湯の山温泉のボロ旅館でも。
自分の縁談やら恋路やらよりも結局他人の人間模様に首を突っ込む。極上の義理人情と、究極の鈍感力。

「、、、?おい、そのバカってのは、、、」
「おうよ、そのバカってのはお前のことよ。」

各シーンにしっかりオチが付いてるし、寅さんの主観的な価値観の押し付けもあれば、それを見てる他人が客観的に寅さんをイジる場面もある。

2作観て、寅さんのパンチ力に対して耐性と免疫ができたかと思えば、それを優に超えて上回ってくる寅さんの決して枠に収まらない人間性。

他人の常識に一切染まらず我が道行けば、他人にどうにもできない困難や固定観念をあっさり覆す。
人の幸せを叶えては自分は傷心しながら爪痕残す“フーテンの寅”。明日はどこ吹く風の渡世人。

「四谷赤坂麹町。チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん立ちションベン。」

相変わらず意味はよくわからず、下品に笑いを取りに行く口上の数々。

これが彼の粋な人情、心意気。
思いを馳せては夢破れる旅慕情。

奮闘努力の甲斐もなく、今日も涙の日が落ちる。


F:1728
M:2575
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