たけちゃん

ミュンヘンのたけちゃんのレビュー・感想・評価

ミュンヘン(2005年製作の映画)
4.1
領収書をくれ!


スティーブン・スピルバーグ監督 2005年製作
主演エリック・バナ、ジェフリー・ラッシュ


パラリンピックが終わりましたね~。
色んな意見はあるのでしょうが、僕はオリンピック・パラリンピック共に、本当に楽しみましたし、特に、パラリンピックに至っては、感動で泣いたことが1度や2度ではなく、本当に今はパラリンピックロスなんです。
ボッチャや、車椅子バスケ、パラバドミントンなど最終日まで釘付けでした!感動をありがとう😊

しかし、平和の祭典と言われるオリンピックも明るい歴史ばかりではありません。今日はこんなことがありました‼️


勝手にお知らせシリーズ「今日は何の日」
本日、9月5日は「ミュンヘンオリンピック事件」として知られるテロ事件が起こった日なんです。
1972年9月5日、西ドイツのミュンヘンでオリンピック参加のために選手村にいたイスラエル選手とコーチ合わせて11人が「黒い9月」を名乗るテロリストに殺害されました。

「黒い9月」とはパレスチナの過激派組織の名称で、数々のテロを起こしました。
イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)との確執は、それこそ旧約聖書の時代に遡るような内容ですから、ここでは語りきれません。ユダヤ人がエジプトから逃れ、国無き民となって、やっと手にしたイスラエル国。しかし、アラブ人にとっても数世紀に渡り住んできた土地。簡単には譲れないものです。ましてや、宗教が絡む事案でもあるので大変です。他者理解のなんと難しいことか。

1967年の第三次中東戦争で、ガザ地区やゴラン高原を軍事占領したイスラエルに対抗すべく、ヨルダンに逃れていたPLOは、だんだん過激さが増したこともありヨルダン政府から疎まれ、武力追放されることに。これによりヨルダン内線が起こり、PLOメンバーの多くが殺された(黒い9月事件)。そこで、PLOの最大派閥ファタハがそれに対抗すべくテロ組織を秘密裏に結成する。それが「黒い9月」と呼ばれる組織です。
1971年以降、多くのテロ事件を起こすが、その中で1番なものが「ミュンヘンオリンピック事件」なんです。最終的に、ファタハとの関係が明るみに出ると、解散することになりました。


今回のオリンピック開会式で、事件が起こってからから初めて、暗殺されたイスラエル選手たちに黙祷を捧げましたが、それも今日、今作を取り上げた理由なんです(-人-)







さて、映画です。
大好きなスピルバーグ監督作。
今回はシリアス・スピちゃん映画です。
自らがユダヤ人であるスピルバーグ監督が「シンドラーのリスト」以来となるユダヤ人もの。
今作の前が「宇宙戦争」、次作が「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」という娯楽作の間に挟まれた作品で、娯楽作で稼いでは、その間に自分の撮りたいものを撮ってる印象。ヒットは二の次って感じよね。


パレスチナの過激組織「黒い9月」のテロと、その報復としてイスラエルの諜報機関モサドが遂行した暗殺事件が描かれた実話もの。エリック・バナが演じるアヴナーは実在の人物で、wikiによると今も名前を変えてアメリカに住んでいるそう。
映画は創作もあるようですが、妻が妊娠中のアヴナーを始め実に普通の人として描かれていましたよね。

例えば、メンバーが初めて揃っての食事は笑顔溢れる穏やかな雰囲気でしたよね。その後、テンプテーションズの「マイガール」が流れる中で男同士で踊るとか前半は暗殺をしながらも普通の人達でした。


ダニエル・クレイグが「007」を演じる前にモサドを演じていたのか~、とか、バルボッサを演じたジェフリー・ラッシュはここでも狡猾だなぁ…とか、脇を固める方も良かったです!


ミュンヘンオリンピック事件で11に殺されたので、「黒い9月」メンバーを11人暗殺する。
そこはまさに「目には目を 歯には歯を」、旧約聖書の教え通りだね。

殺される「黒い9月」の組織メンバーも、普通に家族が居て、幼い娘もいて、その様子に暗室メンバーが悩む様子も、上手く描かれていました。
それにしても、最初の1人が殺されるシーンとか、構図が美しいんだよね。すごく計算されてるなぁ。さすがの撮影者ヤヌス・カミンスキー。


そうした暗殺の中で仲間も暗殺され、アヴナーらは少しずつ心が病んでいきます!

スピルバーグ監督はこの映画でユダヤ人の悲劇を描くというよりは、普通の人間がその置かれた環境によって、少しずつ自分を失い変わっていく姿を描きたかったようなので、その意味では成功していると思いましたよ。

テロや武力では世界は変わらない!
そんな思いは映画全体で醸していました。
ジョン・ウィリアムズの音楽と共に、深い余韻を残す作品でした( •̀ω•́ )و✧