報復としての爆殺。国家によるゲリラ作戦。史実をエンターテインメントとして矮小化せず、片方の勢力に肩入れせず、忠実に描こうという気概は感じられるのだけど、そのせいで全体的に鈍重になっているのは否めないか。脚本家にエリック・ロスが名を連ねていることも、要因の一つだろう(彼の脚本はドッシリしており良くも悪くもスケール感がある。DUNEみたいに)。むろんそれでもスピルバーグとカミンスキーのコンビネーションは炸裂しており、素晴らしい作品。冒頭で戦地の酷さを描いておきながら結局英雄譚に収斂させてしまった『プライベート・ライアン』よりも、戦争のくだらなさを丹念に描いており、その点ではより誠実に感じる。映像面においては銃撃シーンもいいけれどそれ以上に食卓シーンがいい(それもある意味では犯罪映画あるある?)。
ところで、スピルバーグ監督はエンタメ映画のみならず、ドキュメンタリー系でも「専門家によるドリームチームが敵の本拠地に忍び込む」というプロットをつかうね。いわば『七人の侍』フォーマット。一時期以降のアメリカ映画は黒澤明的なものが根本的なレベルで染みついているんだなと再確認。また、中盤のとあるシーンで死亡フラグを鮮やかに回収していて思わずワロタ。こういうところもエンタメ監督だよなぁって再確認する。