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ドノバン珊瑚礁のzhenli13のレビュー・感想・評価

ドノバン珊瑚礁(1963年製作の映画)
3.3
リー・マーヴィンとジョン・フォードが組んだ数少ない作品で、ジョン・ウェインとマーヴィンの殴り合いがたくさん観られるということで期待したが、エンターテイメントとしては若干複雑な気持ちで観ることとなった。「いや現地でスタッフがゴルフしながら撮ったお気楽作品だし」とするなら、どこかの狭い酒場か船の中だけを舞台とした殴り合いエンターテイメントの方がよほど気楽に楽しめそう。

ポリネシアのどこかの島という設定。序盤からエスノセントリズム、キリスト教至上主義丸出しではある。敢えての演出と思いたい。
リー・マーヴィンの帰還を歓待する現地の女性たち、彼女らは次々とキスされ喜んでいる。またイギリス軍の水兵らは自転車で通り過ぎる現地女性の集団を追いかけ、次のシーンで彼女らはめいめい水兵が漕ぐ自転車の前に乗せられている。そしてジョン・ウェインの酒場に集う中高年白人男性らを見ていると、白人退役軍人と現地妻という構図を嫌でも思い出させる。

そんななか、まだ見ぬ父を探してボストンから来訪した富豪の娘エリザベス・アレンは徐々に現地の文化への理解を深め、ジョン・ウェイン、リー・マーヴィン、ジャック・ウォーデンらが自ら選んでその地に留まっている理由も知ることとなる。
クリスマスミサのシーンでは、ポリネシア文化と東アジア(中華)文化への包摂らしきものをも示す。その直後スコールによる大量の雨漏りでミサが台無しになる(リー・マーヴィンだけ傘が無く滝行よろしくスコールを受け続ける)。大雨=抗うことのできない自然現象で洗い流される・皆等しく雨を受けるというシチュエーションにより、西欧社会側からのそれではなくポリネシア側からの包摂が示されるようだ。
エリザベス・アレンも、男らによってひた隠しにされてきた混血の少女がきょうだいであることを自ら知り受け容れる。弁解ともとれる非白人社会・他民族文化の包摂や受容を女性に仮託する。

これだけで、多くのポリネシア社会がご多分にもれず西欧社会の蹂躙を受けて資本主義と物質文明の循環に取り込まれざるを得なかった事実(そういやジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』で、ポリネシア諸島と呼ばれるあたりは人類が定住する時期に紀元前1200年から西暦500年までとかなりの開きがあり地球上で最も遅かったことに驚いた記憶がある。あれもう一回読もう)が帳消しになるとはよもや思えないものの、ジャック・ウォーデンによる非白人社会の白人医師という役柄がのちの『荒野の女たち』に影響しているのかなと想像したりもする。

名誉白人的な中国系らしき秘書がいて、アジア系の中にも階級社会が形成されていることがわかる。日本人らしきキモノを着た女中や中国人の従者ら。畳の上で土足でツイスト踊る子どもたちにお、おう……という気持ちにはなる。19世紀末には苦力として中国人、日本人、インド人などがポリネシア諸島へ移住したらしいが、その末裔ということだろうか。実際彼らの服装や文化はどんななんだろう。

酒場のカウンターにクリスマスプレゼントの模型機関車を広げて夢中になるリー・マーヴィン。ジョン・ウェインに店を譲られてからも酒場の入口いっぱいに模型の線路を広げて這いつくばって眺めてる。こういうのはもっと観たかった。ジョン・ウェイン得みたいなエリザベス・アレンとの歳の差恋愛は要らなかった。
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