タクマ

劇場版 ポケットモンスター 結晶塔の帝王のタクマのレビュー・感想・評価

3.8
幼い少女ミイの孤独な悲しみが古代のポケモンアンノーンの力と共鳴する時、少女の理想の父親像であるエンティと共に巨大な結晶塔が現れた。
誰も知らない金と銀の世界をかけろ!劇場版ポケットモンスターシリーズの第3作。
本作のテーマは「家族愛」「思い出との決別と自立」と言う感じでしょうか?親の愛情に飢えた子供の感情が引き起こす暴走と言う部分からみたら子供に対して自身の感情を我が子の幸福と押しつける親のエゴに対する警鐘とも言えるかも。
まだ幼いながらも父親の都合で孤独を強いられてきたミイ。その思いにアンノーンが呼応した結果彼女が望む物は全て具現化されるとんでもない力がうまれてその中で出現するのが彼女の理想のパパであるエンティ。
自分のほしい物は全て手に入れまさに夢の世界を実現したミイだけどそれはミイの心の中の悲しみや寂しさの裏返しとも取れるから見ていてとても切ない光景でもある。その上で例え理想を具現化する力を持っていたとしてもそれだけが生きていく上での全てなのか?っていうのも現実なわけで。終盤でサトシがエンティに語りかける台詞がそれをストレートに表していました。
クライマックスでミイは自分の夢の世界から現実の世界に帰る決意を固めてそれまでミイを守ることに拘っていたエンティはそんなミイの姿を見てそれまでと同じ様に彼女が望んでいた事を率先してやるためにミイやサトシ達の結晶塔からの脱出を全力で手助けしますがこの辺りは子供の時には見えにくい親の一途で不器用な愛情と例え目には見えなくても思い出と共に人は歩いていけると言う作り手達の子供達に対するメッセージなのかもしれませんね。この辺りのテーマが近年の「劇場版ポケットモンスターココ」のテーマの一つに繋がったんじゃ?って個人的には思ってたりします。
そういうメッセージ性もさることながら後半からの結晶塔内を活かした激しい戦闘シーンは迫力はありますしテレビシリーズの展開を知ってる人間からしたらあのキャラクターの参戦は見ていて激熱でした!
「ミュウツーの逆襲」での深いテーマ力と「ルギア爆誕」での純粋な映画としての面白さを組み合わせた作品がこれだと思います。
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