イチロヲ

デビッド・クローネンバーグのシーバースのイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
多くの人々が居住している高級マンションにて、人間の脳を狂わせてしまう寄生虫が発生してしまう。クローネンバーグ大先生の作家性が爆発している、長編デビュー作。

チンコ型のグロテスクな寄生虫に浸食された人間は、瞬く間に自我の崩壊が引き起こされて、性欲丸出しのエロエロ暴走人間へと変貌してしまう。いわば、エロに特化したゾンビ映画であり、狭いロケーションを最大限に活用しているところが醍醐味となる。

デビュー作でありながら、「寄生、変態、フロイト的心理学」といったキーワードが、すでに確立されている。人間同士の性交渉を、情緒の欠片もない、極めて動物的な行為として描いているところも、後の作品に引き継がれている。

性愛の多様性を矢継ぎ早に見せてくる、クライマックスが圧巻そのもの。エンドクレジットに至っては、後年になって発生するエイズ問題を予見しているようでもある。漫画的な発想を大真面目に映像化してしまう、その発想力と行動力に乾杯。
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