kazマックスグローバーレッド

シャドー・メーカーズのkazマックスグローバーレッドのレビュー・感想・評価

シャドー・メーカーズ(1989年製作の映画)
3.7
第二次世界大戦中の1943年。アメリカ国防総省ペンタゴンを建てたグローブス司令官監視下の元、ドイツ軍より先に原子力爆弾を開発する為にオッペンハイマー博士はじめ世界有数の学者たちがニューメキシコ州ロスアラモスの研究施設コミュニティに集められた。
開発期間はわずか19ヶ月、かの有名な「マンハッタン計画」です。

このコミュニティで見ること聞くこと全ては合衆国陸軍の資産となる超極秘情報なので外部との接触は厳しく管理され、学者達はほぼ軟禁状態。外出が許されたオッペンハイマー博士は妻も黙認している愛人のジーンに会いに行くも彼女は共産主義者。当然、監視の目はより厳しくなります。

やがてドイツ軍が降伏、しかし開発は続行。
「脅しに使うだけで敵は降伏する」と見せられたのは[ファットマンとリトルボーイ]。

実はこの映画、高校生の頃に原題の『ファットマン&リトルボーイ』表記で映画雑誌ロードショーの裏表紙に小さく掲載されていて「太男と小男? 何の映画なんだ??」と阿呆の高校生だった自分は凄く気になっていた。
今でこそ広島・長崎に落ちたそれぞれの原爆名称であることは知っているけど、当時は不思議な名称に困惑してたな。


1945年、無線から流れてくる「くるみ割り人形」をバックに、あのトリニティ実験場での爆発実験が実施されます。
闇夜の観測壕で、非人道的な大量破壊兵器の開発と葛藤していたオッペンハイマー博士のゴーグルがオレンジ色に染まり、爆風で皮膚は波打ち、それに歓喜するオッペンハイマー博士。
もうこのシーンを見た時は今更ながら、ついに人類は取り返しのつかないことをやってしまったか、と思いゾッとした。

「我々は装置と技術を提供したが使用の責任はない」
これこそキューブリックより本当の意味で博士の異常な愛情だわ。

ある登場人物が実験中の事故で核融合のデーモン・コアを触ってしまうシーンがあって改めて放射能汚染の怖さも伝わってきます。



キャストは、グローブス司令官を演じるのがポール・ニューマン。これまで彼が出演してきた映画と比べるとあまり存在感がなかったように思える。

オッペンハイマー博士を演じるのはTVシリーズ『特攻野郎Aチーム』のオチャラケ担当クレイジーモンキーことドワイト・シュルツ。「奇人?変人?だからなに?!」の吹き替えフレーズで、ずっとAチームのチョケた演技しか見たことなかったからそのギャップもあって、この映画の中で一番インパクトがあった。ちゃんと真面目な演技も出来るじゃないの。

オッペンハイマー婦人は『ダイ・ハード』ホリー・マクレーン役のボニー・ベデリア。単純に好みのです、彼女のこと好きです。

ジョン・キューザックは今も昔もお顔はほとんど変わらず。まあまあ重要な役どころ。

SHIELDのコールソン捜査官はこれが俳優デビュー作になるのかな。めっちゃチョイ役だけど骨格からして既にコールソン捜査官なんで若くてもすぐに分かりました。

音楽担当はエンリオ・モリコーネ。『イングロリアス・バスターズ』でタラちゃんが再使用していた同じくモリコーネ作曲の『アルジェの戦い』の楽曲と似ている。同じミリタリーものだからどうしてもモリコーネ脳内で似たような曲が沸いてくるんでしょうね。

クリストファー・ノーラン監督の新作『オッペンハイマー』ではキリアン・マーフィーがオッペンハイマー、婦人がエミリー・ブラント、愛人ジーンがフローレンス・ピュー、グローブス司令官はマット・デイモン。ジョン・キューザックが演じたまあまあ重要な役はロバート・ダウニーJrが演じるらしい。これである程度の人間相関図は把握できました。