櫻イミト

死者にかかってきた電話/恐怖との遭遇の櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.0
「質屋」(1964)「セルピコ」(1973)「狼たちの午後」(1975)などの社会派監督シドニー・ルメットが、スパイ小説で知られるイギリスの作家ジョン・ル・カレの処女作を映画化。「裏切りのサーカス」(2012)も同じ原作者で主人公も同じだが映画では名前が変えられている。

英国内務省の情報部員チャールズ・ドブスは、外務省のフェナンがかつて共産党員だったという手紙を受け取る。公園で本人と会い嫌疑は晴れたと思われたが、その夜フェナンが銃で自殺、チャールズは元警官で友人の探偵メンデスと調査を開始する。ナチスの収容所にいたフェナンの妻と面会中にかかってきたモーニングコールの電話に、チャールズは事件解明のカギを見出す。。。

すごく面白かった。「裏切りのサーカス」は非常にわかりにく辟易したが、本作はとてもわかりやく良質なエンターテイメントだった。クインシー・ジョーンズの劇伴が実に素晴らしく好みな雰囲気。渋めで重厚な作りの本作に華をもたらしていて、オープニングから気分を掴まれた。

男優陣の渋さも本作では魅力となっている。女優陣も、「告白」(1969)「影の軍隊」(1969)での夫イヴ・モンタンとの共演が印象深いシモ―ヌ・シニョレ、「不良少女モニカ」(1952)のハリエット・アンデルソン、ともに適役だった。

ロンドンの寒空の下で繰り広げられる硬質なエンターテイメントは初秋の鑑賞にピッタリだった。
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