すっごく下世話な話を詩的な言葉で綴って行くという、ひとつ間違えれば目も当てられない大惨事になりかねんところをちゃんと映画として成立させて観せ切る匠の技。「ひとりの女性と三人の男の、求めるものと与えるものがひたすらズレていく」という、普通にコメディでいけそうなプロットを使ってここまで辛気臭い感じに仕上げてくるとは、トリアーが敬愛するだけの事はある(褒め言葉)。
冒頭、ゲアトルーズが全く夫の方に顔を向けずに噛み合わない会話を繰り広げる場面で掴みはOK。舞台を写しているような固定アングルの会話シーンからカメラが移動したり人物の画面奥への移動にショットが切り替わる流れであったり、時折サイレントの名残みたいな長文のスーパーが挟まれるところが自分の生理には非常に合ってた(まあ詩的過ぎて意味がさっぱり分からんのだが)。
とここまで散々褒めておいてなんだけど、お話は全然好みじゃ無かったんでスコアの方は伸び悩み。もし小さなディスプレイで見てたら「なんやこの話」って途中で挫折してたかも知れんので劇場にかけてくれて感謝、という一本。
