えるふぁにんぐ

ガートルード/ゲアトルーズのえるふぁにんぐのレビュー・感想・評価

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会話劇

若さとは美しさ。美しさとは若さ。

ゲアトルーズはもうとっくに惨めだと分かっているのに、元カレが傷をえぐる。しかし元カレだって若いピアノ男の口から愛する女の名前を聞いて傷ついたんだ。せめて一緒に傷つきたくて、涙ながらにゲアトルーズにその話をする。ショットは火の灯る蝋燭に囲まれた何も映さない浮き彫りの鏡になる。
蝋燭の引火に誘われ鏡の中に登場したゲアトルーズだったが、覚悟として火を吹き消しその場を去る。再び浮き彫りになった鏡は去る彼女の背を映すだけ。

友との手紙が正しく燃やされて、ゲアトルーズは自身が16歳に書いた詩を読む。
過去から送られる未来への手紙として、詩は彼女に届いた。
16歳の少女の詩は、決して残酷というより、あらゆる美しさへの希望として、ゲアトルーズに届く。
去る友は二度ほど振り返り、その度にさようならの手を挙げる。親しみが担保されたその仕草に悲しみは無い。死によって確実に訪れるであろう別れを受け入れた挨拶であり、それはもう堂々としていた。ゲアトルーズも歳をとった。堂々とした別れが訪れるほどに歳をとった。若さに翻弄されることのないほどに歳をとった。
ゲアトルーズによって扉は閉められ映画は幕を引く。
浮き彫りになった扉は、何かを映しはしない。