【悪くない】
1951年のモノクロ映画。
京都の祇園を舞台に、芸者の母を持つ二人の娘 (京マチ子、藤田泰子) の対照的な生き方を描いています。
姉は売れっ子芸者として男を手玉に取り、お人好しの母が昔の旦那の息子に義理立てして借金をするのに立腹しながらも、男からカネを搾り取ってやっていく。
他方、妹は花柳界には目を向けず、戦後にふさわしい新しい生き方を模索しています。
この二人の描き分けがすばらしい。
藤田泰子という女優は、私はこの映画で初めて見ましたが、男をそそるような美人ではないけれど、家庭をもったらしっかりやっていけそうな、健康的な魅力にあふれています。
一方、彼女と恋仲になる若い頃の小林桂樹がいかにも頼りない。こういう冴えない男でも年を取ると風格が出てくるものだなと今さらながらに痛感しました。
こんな封建的なところなんか出ていっちゃいなさいと、友人から励まされた妹が東京へ向けて旅立つところで幕となるのですが、母の経済的苦境を救うのは古い花柳界で生きる姉のほうであり、必ずしも新時代の讃歌といった性格には収まらない映画になっています。